春とヒコーキ土岡哲朗

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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大満足のエンタメで有終の美。

今までの恐竜パニックに『ミッション:インポッシブル』を足して新しいものに。
恐竜が追いかけてくるのをハラハラと逃げるシリーズだが、今回は恐竜以外の要素でのアクション、ミッションも多い。町での追跡劇や研究所への潜入、洞窟の移動など、景色を変えてアドベンチャーをずっと提供。恐竜との絡みも、前作で恐竜が人間世界に放たれた展開を受け、町の中でチェイスするシーンが生まれた。

やっぱり怖い、恐竜たち。
元々、「恐竜と会えるなんてワクワクする!」という希望をぶち壊すほど恐竜が襲い掛かってくる、というシリーズだが、今回も初めて見る怖いシーンがたくさんあった。
また、今まではパークに遊びに来たモブの人が食べられてしまうことはあったが、今回は恐竜が町のそこらじゅうにいることで、パークに遊びに行ってすらいない街の人まで食べられる。残虐性が増していた。

シリーズの象徴ティラノサウルスが最後にまた活躍。最終作にしてティラノが負けて終わりかと思いきや、倒れた彼女の目がギンと開き、勝って終わってくれて気持ちいい。この勝敗は主人公たちの生還には関係ないが、主人公たちの文脈と関係なく恐竜の力比べが展開されるとろこに、恐竜の強さを感じるし、人間の非力さがすがすがしい。

恐竜が扉を割って顔を覗かせる『シャイニング』、水中に身を隠したクレアが沼からゆっくり顔を上げる『地獄の黙示録』、モノレール内でエリマキ恐竜たちが悪役に襲い掛かるのは宇宙船内で『エイリアン』に囲まれたよう。様々な映画へのオマージュシーンを入れているが、ティラノサウルスが丸いエンブレムの後ろを通り、シリーズのロゴのような形になるセルフオマージュまであり、このシリーズもまた偉大だと改めて感じた。そして何より、初代主人公たちの扱いが素晴らしい。今シリーズのストーリーをまとめ、旧シリーズも含めた大団円。見事な完結編。

スター・ウォーズを撮ってほしかった。
トレボロウ監督は、ワールド1作目の腕を買われ、エピソード9に抜擢されたが、のちに降板。でも今回、人気映画のリブートシリーズの完結編という同じ条件の映画をこうも見事に成功させたのを見て、やはりこの人に撮ってほしかったと思った。
トレボロウ監督がしたためていたエピソード9の案「運命の戦い」はネットで流出していて、それをまるっきり見たかったというわけではないが、今作みたいなエピソード9が見たかった。
SWは、エピソード8での「レイが特別な生まれではない」という衝撃の事実を完結編でむげにした。でもこちらは、メイジーがクローンという設定をほったらかしにせずに、適度に拾ってハッピーエンドに持って行っている。
初代主人公3人が出てくるところがしっかりかっこよかったり、ぽっと出の新キャラで仲間になる黒人女性が『スカイウォーカーの夜明け』のジャナと重なったり、似ている点を感じる。もうトレボロウ監督が対抗意識を持って「おれならできた」とアピールしてきてるのかとさえ思った。
この映画の形でいけば、レイの「親が何者でもない」出自はひっくり返さず、パルパティーンの孫にしなかったはず。パルパが登場するにしても、レイを彼の孫にせず、パルパティーンは銀河中のフォースの強い子を探していた、でいいし。……こうして、他の映画を観てもずっとエピソード9を追い求めるのかも。