登場人物たちが歌って踊っている理由が、どれも全くハッピーではない。
なのに歌って踊っているから見ているこちらは最高に楽しくなってしまう。
ダンス会場のシーンで、キレッキレのダンスと、キレッキレのカメラワークに呑まれていつのまにか泣いていた。楽し過ぎて自然と涙が出るって何?
自分でもびっくりした。画面の中の人たちは、敵意剥き出しでいがみ合っているのに、確かに気分が高揚して感動した。
なんだろう、冷静になって考えてみると、とても不思議で複雑な気分だ。人が真剣に喧嘩している様子を見て、それを派手に飾りつけた歌と踊りに脳がバグって楽しくなってしまった。なんだか良くないことをしているように感じる。でもこれが娯楽の本質なのかもしれない。
最後までこの映画は僕らを楽しませてくれる。常にこちらに気を遣いつつ、物語を展開していく。歌も踊りもなければ、なんて深刻な物語なのだろう。鑑賞中はそれに気付かない。最後に音楽が止まり、ふと甘いコーティングの取れたこの物語に出会う時、夢は突然終わりを告げる。
あぁこんな風に映画が終わっていいものか。楽しかった夢の続きに想いを馳せながら、行き場のない悔しさがやってくる。
こんな終わり方があるかよ。観賞後に生まれたその感情こそが、現実で僕らが紡ぐべき『ウエストサイドストーリー』の続きを予感させる。