河

ウエスト・サイド・ストーリーの河のレビュー・感想・評価

3.6
ゴダールの映画でよく闇を照らす光としてのモチーフとして映画(映写機)が使われるけど、それをそのままやったような映画で、過去の出来事に基づいた過去に作られた話、今はもうない街を今現在の話として光を当てて再度作り替えた上で、それをもう一度過去のものにしようとする映画のように思った。だから映画の中で光による演出が中心的になっているし、闇に向かうラストショットがあってあのエンドロールになるんだろうと思う。
主要な登場人物は人が全員移民で貧民層っていう意味で共通する一方で、肌の色、民族、個人の生まれ育った背景、性別の違いによって分断されている。さらに性別による役割の違いが民族によって規定されるなど、そのレイヤーの異なる違いが互いに規定し合っている。その違いが組み合わさることによって悲劇が起こる。そしてその要因はその違いのある人々や民族が強制的に同じ場所に集められたこと、住む場所が奪われる / られたことにある。
レイヤーの異なる違いが組み合わさって悲劇に繋がっていくプロット、さらにそれに繋がる個人の行動が何かしらの理想や大義のためや個人の意思によるものではなく、その違いによって規定されてしまったものであるっていう環境が個人を規定してしまうことへの一貫した視点、光を明確に意識した映像に感動したけど、30分くらい短くできたんじゃないか的な気持ちもある。体感時間がちゃんと150分だった。
河