TaiRa

ウエスト・サイド・ストーリーのTaiRaのレビュー・感想・評価

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スピルバーグとカミンスキーがバッキバキのギラギラで最高だった。

スピルバーグがトニー・クシュナーを招集する時はいつもアメリカへの政治的態度を表明して来たけど、今回も例に漏れずそういうものだった。社会から取り残された貧困白人とラテン系移民の軋轢を、1950年代から現代まで変わらぬアメリカの持病として憂う視点。スピルバーグってほとんど悲劇撮らないけど、こういう大事な時はクシュナーの手を借りてやる。初のミュージカルで演出ノッてるのが分かる画面の華やかさ。苦労人や新人俳優がここぞとばかりに活気溢れるパフォーマンスを披露していて、映画全体の熱量が非常に高い。主要キャラクターが映えるロバート・ワイズ版の魅力と違い、スピルバーグは登場人物をより群像として捉え、ミュージカル場面も群舞として魅惑的に撮る。役者一人ずつ比べればワイズ版の方が良い面もあるが、数で言えばスピルバーグ版かな。ダンスはフルショットの鉄則を守りつつも、スピルバーグは撮影と編集で映画盛り上げるの誰よりも上手い自負があるから結構割ってる。構成は舞台版へのオマージュを残しつつ、ワイズ版のアレンジも要所で踏襲。2009年のリバイバル公演によるスペイン語フィーチャーなチューニングも今回の映画でより明確化。(本国公開において)台詞に字幕を入れない態度も現代的だし副次的な効果も生む。楽曲の並びでは「アメリカ」と「クラプキ巡査どの」を順に見せるのが、プエルトリコ系とポーランド系それぞれの背景と思いを並列に見せられて良い。舞台版通り「素敵な気持ち」を「決闘」の後に見せるのは、意図的とは言えやっぱ気持ちが乗り辛いし、そこはワイズ版の様に陽性の曲は「決闘」前に済ませた方が良いと思った。「クール」は流石にワイズ版のカッコ良さに太刀打ち出来ないと判断してるスピルバーグが面白い。そのまんまやってもワイズ、スコセッシ『BAD』の3番煎じだし。動きが付け辛い「トゥナイト」でも動線とカット割りで意外な程にダイナミズムを生み出し、場面を持たせているのが流石スピルバーグだなと。映画上手過ぎる。
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