社会のダストダス

ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇りの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

4.9
失敗を続けるのをやめたら本当に失敗するというのは、全てのゲームに通ずる教訓だと思う。

SプラスのB級映画爆誕。ビデオゲームを含めたゲームを原作にした映画の中で史上最高の出来なのではないかと思うくらい良かった。こんなクソダサなサブタイトルがついてる映画にハイスコアをつけなければいけないなんてプライドが許せなかったが、これはもう認めるしかないだろう。テーブルゲームのRPGが基になっているが、ビデオゲームの小ネタが濃いように感じた。

基になったゲームはやったことは無いが、ドラマ『ストレンジャー・シングス』でよくネタに使われるので何となくの世界観は掴んでいるつもりだった。ダンジョンとドラゴンが出てくるなら、つまりはドラクエみたいなもんだろうと。大体合っていたとは思うが、自分的に一番しっくりくる例えは『明るいスカイリム』だろうか。伝わる人は多く無いかもしれないが、昔はよくファンタジーゲームをよくやっていたものの、膝に矢を受けてしまってな…。

役柄と演者のイメージが一致する配役が素晴らしい

エドガン(クリス・パイン)…主役にして司令塔だがこれと言って光る特技がない、オールラウンダーにも器用貧乏にもなりえる勇者枠。バトルはほとんどミシェル兄貴に任せる光景は『ワンダー・ウーマン』でのイメージにぴったり、ロクな仕事しないくせにカリスマがあるという特異な属性の持ち主。

ホルガ(ミシェル・ロドリゲス)…ミシェル・ロドリゲスのためにあて書きされたような、物理において彼の右に出る者はいないバトルの人。ファンタジー映画においてメインの男女の完全な友情が描かれているのも珍しい気がする。

サイモン(ジャスティス・スミス)…ダイの大冒険でいうポップ、素質はありながらも自分に自信のない魔法使い。ジャスティス・スミスを観た作品って、今のところ全ての作品で不景気な表情がデフォルトだということに気づいた、にもかかわらず作品毎に妖精どころの女優と良い雰囲気になる、何故だ、許せない。

ドレク(ソフィア・リリスちゃん)…妖精とハルクを兼任する妖精、強さと可愛さと正義を兼ね備える。角が生えてて尻尾もあるし、VFX予算の多くは彼女のために用意されているくらいビジュ爆発。『IT』の頃のイメージそのままに順調に大人に成長中。好き。

ゼンク(レジェ=ジーン・ペイジ)…ゲームでいう、いわゆるゲストパーティーキャラクター。こういうキャラって最近のゲームだと不死属性付くから敵中に放り込まれて全滅させるまで放置されがちだよなって思ったら、まんまの光景が繰り広げられて笑った。曲がったことが大嫌いで、クエスト完了後に障害物をものともせずに直進する姿もゲームではあるある。

そしてメインの悪役はかなり凶悪な奴だけど、それとは別にハンサムとにやけアホ面を併せ持つヒュー・グラントをセットに据えた事で、悪役サイドもおバカにならない程度にユーモアがあるのが良かった。『パディントン2』の彼が映画の悪役ではトップクラスに好きなのだけど、今回も最後はヒュー様劇場だった。

異なる特技を持つ仲間たちを集めて一つの目的を達成する、ドラクエとかなら見慣れた光景だけど、ちょっぴり『オーシャンズ11』みたいなケイパー映画っぽさもある。ファンタジー映画としての純粋な完成度と、ゲームによくある小ネタをメタフィクションとしてさりげないレベルに落とし込んだ演出のバランスが良かった。墓場のシーンで会話の途中で離脱するとそのままの状態で相手が待機になるのとか、最近のゲームだとあるある過ぎて芸が細かい。

疲れた精神状態に一番薬になるような素晴らしくポジティブな映画。賞レースとかには一切絡まないだろうことは命賭けてもいいレベルで確実だし、果たして続編が作られるレベルまでヒットしたのかも分からないけど、一見さんの入りづらい大作映画が増えているなかこれだけ分かり易く楽しい映画が2023年にも生まれることを証明してくれた。

役者陣の本物の声が聴きたかったので字幕版で観たのだけど、最後の最後でなぜか日本語主題歌が流れるという配給からの「つうこんのいちげき」を喰らってしまったので、惜しくも満点には届きませんでした(曲自体は良いと思ったけど)。この先、Blu-rayや配信とかで完全版を観ることが出来たら直すかもしれない。あと、ちっさいオッサンどこかで見た顔だと思ったが、ブラッドリー・クーパーかい、エンドクレジットでやっと確信した。