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キャッツのNMのレビュー・感想・評価

キャッツ(2019年製作の映画)
3.3
夜中のロンドン。
街の片隅に幼い白猫ヴィクトリアが捨てられてしまう。するとたくさんの街の猫集団ジェリクルキャッツが近づいてきて彼女に声をかける。
今夜はジェリクルボールという宴がある。パフォーマンスを競い、長老が指名した者は天上の世界へと行けるという。猫たちはその座を巡って見事な出し物を見せる。
しかし汚い手段で自分が選ばれようとする猫が……。

とりあえず観始めたら歌唱が良いので注意を引かれた。
有名なミュージカルということ以外知識がないのでわけもわからず観ていく。
最初は、猫の格好をしていることに気を取られがちだが、観ていくと段々それは気にならなくなり、たまに耳がぴこぴこ動いていることやしっぽがふさふさなことに目が行くぐらい。
こういうのはいかに早くその世界に入り込むできるかが大事。

歌がレミゼっぽいなと思ったら同じ監督だった。
舞踏はバレエで猫らしい軽やかさがあるが、それをじっくり魅せるようなシーンは少ない。みんなでわいわい、カメラも頻繁にスイッチするためダンスそのものより雰囲気を楽しむ感じ。
グリザベラの独唱はとても良かった。まさにエポニーヌ。私は一番彼女に惹かれた。こことそれに続くヴィクトリアの歌唱は見どころ。
そういえばヴィクトリアもまさにコゼット。彼女も登場からみんなに声をかけられていて気づきづらいが、ひどい半生。周りに引っ張られ忙しいが実際は絶望もしたはず。これまでに幸せな思い出などあるとは思えない。

ヴィクトリアは色んな猫と顔を寄せ合ったりするので誰かと恋に落ちるのかと思い込んでいたが、それは猫だからであって他の猫たちもよくしている。握手とかハグみたいなものか。

ところどころベテランというか重鎮が出演しているがそれが作品に重みをもたらしていて良い。
若くたくましい猫だけでなく、落ちぶれた者もたくさん出てきて人生の盛衰を歌う。
ガスのステージも味があって説得力もあって良い。ガスは舞台前に水を飲む様子といい、その背中の丸みといいまさに老猫。

意外と宗教色のある展開だった。
人生(猫生)をエンジョイしているように見えて、実はもう別の猫生を生きたいと思っている猫たち。
どうせ選ばれないだろうけど痩せ猫に生まれ変わりたいから一応出るとかいう軽いものから、悲しく辛い猫生から放たれ幸せになりたいと願うものまで。
とりあえず今の生には固執していないらしい。

全体的に、海外に比べれば日本ではウケづらい作品なのかなと感じた。
字幕版で観たが、吹替版もすごい声優陣なので、そちらで観たほうがしっくりくる可能性もありそう。更にやはりミュージカル版なら尚観やすいのだろう。それに宴での猫たちのシーンはやはり生で観たほうが迫力があって楽しそう。


追記
吹替版も観てみた。かなり観やすい。
吹き替え声優というのは、ただ元の俳優に似た人を選ぶのではなく、日本ではどういう雰囲気のほうがハマるかを考慮して受け入れやすい人を選んでいるのだろう。
翻訳もすんなり胸に落ちやすくなっている。
特別ミュージカル好きとか原語にこだわりが強くなければ日本人にはこちらのほうがお薦めかも。
ガス、グリザベラの歌唱が好きだった。
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