無何有郷

キャッツの無何有郷のレビュー・感想・評価

キャッツ(2019年製作の映画)
4.0
良かったところ。なんと言っても圧巻のMemory!!そこに至るまでの全てをかっさらっていく、CGを忘れる圧倒的な表現力。これまで観た中でも最高だった。これを観るために映画館に来たと思えた。この映画オリジナルの役どころのヴィクトリアも、素足なのにまるでトウシューズを履いてるように踊る高度なテクニック、ビジュアルも声もかわいかった。テイラースイフトの書き下ろしの曲も期待以上だった。

そもそも、CATSというミュージカル舞台が天才達により生まれた類なき傑作であることを一旦確認したい。それを映画化するにあたって、製作陣が試みたことは大きく2つあると思う。
1つは、舞台にはあまりないストーリー性を持たせたこと。ヴィクトリアというキャラクターを観客目線と一体化できるよう大きく改変し、個々が際立っていたパフォーマンスに全体的なまとまりを持たせた。これに対して個人的に思うのは、キャラクターの説明が丁寧なのは良いが、一貫性を持たせることでこのミュージカルの本質的な部分、不条理とも言えるその醍醐味が失われたようにも思う。あとラブストーリーは絶対にいらなかった。
2つめ、なんといってもCG。これまで観た人が散々言ってるので詳しく書かないけど最も残念なのは素晴らしい身体能力をもつダンサーの筋肉の動きがCGのせいで見えなくなっていること。ダンサーの肉体で猫を表現するのが見どころなのが、CGの介入のせいでぶち壊しである。結果、歌やタップダンスなど、舞台的な要素がそのまま残ってるシーンばかりが良かった。安っぽいディズニーみたいなセットも酷い。劇団四季の舞台のセットはみてるだけで楽しいのに。そういうところCG頑張ってよ。

しかしこの酷評も、傑作舞台を映画化するという上で舞台との差異化を試行錯誤した結果なのかと思うと心底気の毒になってしまう。役者は素晴らしいし、スタッフもいろいろ考えたんだろうし、嗚呼誰も悪くないじゃないか。悪口を言うなら、せめてユーモアのあるものであることを願うばかり。
無何有郷

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