ぶん

男はつらいよ お帰り 寅さんのぶんのレビュー・感想・評価

4.5
後悔していることがある。

幼いころ正月になると家族揃って近鉄電車で、いかいの(布施駅)の大きい映画館まで行って寅さんを観るのがお決まりだった。

小学5~6年生ぐらいになって、友達は好きな映画を観に行ってるのにうちの家ときたら寅さん一択。
ある年の正月、当然のごとく寅さん行こか〜と流すオトンに「お父ちゃん、うちはなんでいつも寅さんなん?ほかのん観たいねんけど💢 ワタシ友達と行くからお金ちょうだい!」…と突っぱねた。

「何ゆうてんねん、正月言うたら寅さんやないかい。もうええわ」
売り言葉に買い言葉で不機嫌になるオトン。。

オカンが仲裁に入り、両方行ったらいいやない今日は家族で行こうと妥協策を出してくれた。
けれど、引っ込みがつかなくなったワタシは留守番のばぁちゃんの腰にへばりついて断固離れなかった。

「おばあちゃんが喉に餅つめんよう見とくぅ!!絶対に見とくぅぅ!!」

お正月が来るたびに笑い話にされるけど、悪いことをしたなと思う。


その年の春。
いや、次の年だったかも知れない。

はじめて友達と校区外の天王寺アポロ(映画館)へ行った。

小学校最後の春休み。
背の高い子がまだ子供料金で乗車できるんか、みんなドキドキして改札を通った。

帰り道はドムドムへ寄って人生初のシェイクを注文し、それだけでゆうに2時間は喋った。
ガラス越しに見える街はとにかく洒落ている。
全員、親には内緒で出てきて物凄く大人になった気がしていた。

夕方、急に家路が気になりだした私達。
帰りの電車では案外静かだった。
いつかのオトンとの口論が少し頭をよぎった。

…………………
寅さんを観ると、いつも家族と過ごした想い出がよみがえる。
私にとって寅さんは、良くも悪くも家族の象徴そのものだ。
改めて観るのは気恥ずかしい。
お盆や正月など特別な日にたまたま目にすれば、それでいい。

じつは渥美清さんという俳優が寅さんを演じていると知ったのは、随分あとになってからなんです🤐
寅さんは寅さんとして実在していると思っていたあの頃。
校区外の幸せ探しをする前から、幸せはもうそこにあった。


冒頭の桑田さんの登場は、エンドロールの渥美さんの良さを引き出すためのパフォーマンスだったに違いない。
やっぱり渥美さんの歌は🙆
威勢はいいが本音では押しの弱〜い寅の代役は誰にもできない😌💯
ぶん

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