清水一行原作の小説を東京映画配給で実写映画化された社会派サスペンス映画。監督は「くちづけ」「青空娘」「兵隊ヤクザ」などの増村保造。キャストは田宮二郎、近藤正臣、関根恵子、梶芽衣子などなど

東海道新幹線が時速200キロ近く高速で駆け抜けていく。その際にでる轟音が原因で、名古屋の近隣の集合住宅地に住んでいる老人などは、心臓発作や癲癇を起こし、医者の秋山の努力空しくなくなった。やりきれない気持ちの秋山は、彼らの悲痛さを政府に訴えるために、彼は新幹線にニトログリセリンを仕掛け騒音解決の政策を要求した。これに立ち向かうべくエリート刑事の滝川との駆け引きが始まる。

動脈列島…新幹線大爆破などにも通ずる、高度経済成長期の象徴ともいえる新幹線を軸に繰り広げられる公害をテーマにした一大スペクタクルの作品である。

しかし、新幹線大爆破とかと比べると…個人的にはあまり乗れなかったんですよね。台詞がちょっと冗長と言いますか、序盤からあまりにも緊張感の無いようなトボトボとした展開が続いていきます。

無理もないかもしれません。新幹線大爆破に比べると、まだあっちの方は一刻を争う猶予もないほどの緊迫感が常に画面に漂い、ノンストップの展開が長い映画の上映時間でも絶えず繰り広げられたからです。

それに対して、この映画は犯人がもう脅迫状で「7日間」も猶予を与えていて、その間も別に乗客に影響が出るわけでもない。テロリストが出てきて乗客も巻き込むスケールのでかいことをしながら、どうも小さく纏まってしまいそうなクオリティーがちょっと見ていて空回りしてしまったのかもしれませんね。

映画内で繰り広げられる会話も緊張感がない。田宮二郎が軽妙な口調であてずっぽうなヤマカンで犯人がいそうな地域を指定してそこに捜査網を張るというのを、得意げに語らせるだけ。ここに緊迫感やら本当に一大事を扱っているというリアリティーが入ればよかったのかもしれませんね。

終盤の展開が一番の見どころなのかもしれませんが、どうも迫力にかける。ショベルカーにパトカーが突っ込んでいく姿はとても良いのだが、もうちょっと東映の実録映画的な破天荒ぷりが欲しい。そうだ。この映画ケレンミが足りないよ。田宮二郎が全部二枚目の演技でその部分を取ってしまっているのかもしれない。

結構ズタボロに言っていますが、淡々としながらも事件解決に一歩ずつ向かっていく物語構成自体は悪くない。ただ、後年の作品などを観ているせいか思ってしまうのだが、それプラスアルファみたいなものが欲しかったのかもしれません。

増村さんは元はと言えば、こういうスケールの大きい映画より、もうちょっとパーソナルの情緒的な部分に焦点を当てた作品が多いから慣れなかったのだろうか。他の作品はぜひとも見たいのだが、この映画ではその良さは梶芽衣子の存在感だけだったのかもしれませんね。

しかし、絵作りなども含めて印象に残るところも多い。序盤の詰まった新幹線の便所に手を突っ込むシーンとかは無駄に生々しいため印象に残りました。

いずれにせよ、観れて良かったと思います。やはり日本映画は弱者と情緒で訴える作品が目立ちますね。それが無難なゆえにマンネリ化しているところも否めませんが。

新文芸坐・梶芽衣子特集。
場外馬券場かと見紛うようないイイ顔したオヤジ多数。
ここで注意しなくてはならないのはトイレ事情。
通常の商業施設なら女子トイレに行列が見られるものだが、頻尿の爺様が多く、上映直後の男子トイレには注意が必要。

本日の二本は増村保造監督作品。

新幹線の騒音問題で苦しむ老婆の死から義憤を爆発させる近藤正臣演ずるインターン医師と田宮二郎演ずるエリート捜査官の対決を描く社会派エンタメ作品。
『スピード』の元ネタと言われる『新幹線大爆破』が東映作品として公開されるのに対抗して東宝が配したのが本作。
監督始め旧大映のメンツが散見。

田宮二郎の一点の曇りないスーパースターぶり。
近藤正臣の色気。
関根恵子の隠し切れないエロスと穢れ。
梶芽衣子の危うさ。
脇役陣も実に豪華で見るに飽きない。

少ないデータから謎の霊感山勘第六感でプロファイリングをビシバシ的中させていく田宮二郎。
あまりにリアリティのないダンディズムの見事さは天晴れ。

ご都合主義には目を瞑って70年代日本を満喫することにした。
増村保造らしさは見られないが潤沢な予算と撮るべき画が山盛りに用意されていたのでは、らしさを出す余裕もなかったのかもしれない。

〜〜

騒音といえば、映画館でのノイズ問題は我々の永遠の課題だ。
映画開始後、遅れて入場してきた爺様が一つ隣のおっさんがドッカと隣席に置いた鞄に目もくれず隣に着席。
嫌な予感がしたが、案の定声を出してアクビしたりため息ついたりペチャリと不快な音を立てたり、やがて居眠りで軽いイビキ。
そのまま永眠してくれたら良かったのだが、劇中の新幹線の轟音に律儀に反応して起床。
再びウワーと欠伸をしたところで、私の心のニトログリセリンが暴発。
最低限の節度で軽く合図をし、シーッと指を立てたところ、爺様が激昂。
"アクビくらい仕方なかろうー、気分悪い！"
と吠え始めた。
渾身の殺人光線を目から放ったところ、落ち着いてくれて事なきを得ましたとさ。

期待して乗り込んだ増村二本立てに暗雲立ち込め、二本目へ。

2018劇場鑑賞56本目

• #増村保造
• #梶芽衣子特集

新幹線の騒音問題に一石投じようとする1人の男と、彼の破壊工作を未然に防ごうとする捜査本部による緊迫の10日間を描いた作品。

日本列島を動脈のように結び、多くの国民の足として使われる新幹線。
だが、そのけたたましく響く轟音は鉄道直下に住む多くの住民を苦しめていた。
かねてから騒音問題に対し異議を唱えていた秋山は、患者の死をキッカケに、国に対して是正策を訴えると共に新幹線爆破の予告を行う。

実際に裁判が行われていたという当時の世相を表す社会派なテーマを克明に描きながら、驚くべきはその作劇の上手さ。
映画の中で「問題提起」として奮闘する犯人、犯人をジワジワと追い詰めるプロの捜査官によるスリリングな頭脳戦に、最後まで飽きることなく引き込まれた。

若き研修医秋山を演じるのは近藤正臣。山内容堂や本多正信(真田丸楽しみにしてるぞ！)など、近年ではイヤミなジジイ役がハマりつつあるが、まさか若い時はこんなセクシーなイケメンだったなんて‥。
また、中々出てこないと思っていた梶芽衣子の使い方がこれまたうまい。
彼女の存在によって彼の計画はより一層スムーズに進み、悲しき愛の刹那が秋山というキャラクターの輪郭をより一層濃くさせていた。

国鉄総裁の家の警備の薄さなど少々気になった箇所もあるが、それでもこの尺でこの内容だったら殆ど言うこと無し。
つい最近も新幹線の「安全神話」を脅かすニュースがあったばかりなので、
犯人の脅威によってやっと危険要素に気づくとこなんか、感慨深いものを感じた。

(@シネマヴェーラ渋谷〜女優•梶芽衣子特集〜/2015.7.22)