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THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~のslowのレビュー・感想・評価

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わたしたちはまだ魚影の群れのように不確かで、与えられるものと果たすべきことの交わりに戸惑い、水面に萌える夢や罪も、反射する街のネオンと同じ、一つ一つ思い出したりはしない。これは夢だろう。キラキラとした上澄みから振るい落とされないよう、わたしの意識はその只中を泳いでいる。そういう、仮の夢だった。幸いにして伝わらない本音が、大好きな深夜のラジオによって暴露され、リクエストが「あの子は運び屋だった」と告発している。わたしは可笑しくなってくすりと笑い、その歌をしばらく口遊んでいた。もし、鱗が全て剥がれ落ちて、わたしが人間になってしまっても、この夢は覚えていようと寝惚けて、全部忘れた。
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