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シークレット・エスケープ パリへの逃避行のSY3KRのレビュー・感想・評価

3.0
長編TVドラマの脚本を担当することが多かったドミニク・サヴェージ監督が初の長編映画を担当し、女性の自立と解放をテーマに描いたドラマ。

優しい夫と可愛い子どもたちに囲まれ、裕福な生活を送っているにも関わらず、タラは毎日閉塞感を感じながら生きている。起き抜けに夫の性欲を処理する行為に付き合わされ、子どもの目の前で自分を悪者のように扱われ、休日はやりたくもない隣人付き合いに参加する。
育児・家事に奔走する女性たちが感じる些細なフラストレーションがあちこちに見え隠れし、タラのストレスを疑似体験させられているかのような感覚に陥る。

また、ジェマ・アータートンのパフォーマンスが圧倒的。アップで映し出されるタラの表情は魂の抜け殻で、喜怒哀楽の感情を完全に失っている。虚無を湛え、目はどこか遠くをぼーっと見つめたまま。見ているうちに、「彼女が何か大変なことを仕出かしてしまうんじゃないか」という不安に駆られた。

これらのおかげで前半部分は見どころもあるのだが、問題なのは駆け足気味になった後半部分の処理だろう。いくら何でも主人公の行動は短絡的に過ぎるし、嫌悪感を抱く人も多いと思われる。主人公への共感を失ったが為に、このドラマを通じて訴えかけたいメッセージ性までぼやけてしまい、全体としてはやや凡庸な出来映えとなった。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率:76%
・観客支持率 :49%
「結婚生活の残滓を描きながら、ジェンダーのモラルを探る作品だ。また、過小評価されているジェマ・アータートンの才能を証明する、新たな機会を提供している。」
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