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オーソン・ウェルズが遺したもののCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.5
【呪われた映画は過程が面白い】
ふと、ホドロフスキー監督は『DUNE』を完成させないで良かったと思った。

オーソン・ウェルズの未完の映画『The Other Side of Wind』はNetflixの手によって無理矢理完成させられたが、やはり《違う》と思った。

そして、『The Other Side of Wind』の製作過程を追った『オーソン・ウェルズが遺したもの』を観たら、断然こっちの方が面白かった。ドラマがあった。

26歳にして『市民ケーン』という映画史最強の映画を作り神になった男オーソン・ウェルズ。しかし、拘りが強く、また未来的な技法を使う為、『黒い罠』の失敗で完全にハリウッドから干された。ヨーロッパに渡り『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』なんかも作るが、なかなか映画を作らせてもらえなかった。そんな彼が企画した『The Other Side of Wind』。

彼は言う
「偶然を釣りに行こう!」
かくして映画製作が始まった。脇に鬼才ピーター・ボグダノビッチ、ミューズであるオヤ・コダールを携え。しかし、資金繰りは厳しく、AFIから生涯業績賞授賞式に呼ばれた際に本作の宣伝をするものの、誰も金は出してくれなかった。

そんな困難とは裏腹に美しくカッコイイFRAGMENTだけが出来上がる。ひょっとして、オーソン・ウェルズ。真面目に完成させる気なかったのでは?ホドロフスキーは意図せず、『DUNE』のFRAGMENTが映画界に影響をもたらしたが、ウェルズは意図してそれをやろうとしたのでは?

正直、このドキュメンタリーを観てもオーソン・ウェルズの気持ちなど分からないのだが、彼は神から地に堕ちそこから這いつくばるようにして、映画史に美しい傷跡をつけたことは分かる。

『オーソン・ウェルズが遺したもの』と『The Other Side of Wind』は2本で1本なので、是非両方挑戦してみてください。
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