NAOKI

バスターズのNAOKIのレビュー・感想・評価

バスターズ(2012年製作の映画)
3.6
大型の輸送車の中は戦いを前に高揚したおれたちの荒い息づかいで満たされていた…話すものはほとんどいない。
顔まで覆われた漆黒の戦闘スーツの白いラインが鈍く光る…

おれたちの仕事は常に死と隣り合わせだ…おれたちに名前はない…番号がふられているだけだ…

さっきから隣の52号がガタガタと震えていて気になる…
おれは思い切って声をかけてみた…
「52号…お前…現場は初めてか?」
「26号先輩…はい…始めてっす」
「そうか…最初は誰でも緊張する…気楽に行け…」
「先輩…やつは…やつは一体どんな野郎なんです?たった一人なのに毎回…我々の多くがやつの手に…」
「恐ろしいやつだ…前回の出動の時…おれはやつの動きを止めようと後ろから羽交い締めにしようとしたんだ…ものすごい力だった…あっという間に弾き飛ばされて意識を失っちまった…基地で目を覚ましたとき仲間たちの死を知らされたよ…」
「先輩…おれは結婚したばかりなんすよ…怖いです…生きて帰りたい」
「52号…お前は今日は後ろに下がってろ…無理はするな」
「先輩はご家族は?」
「子供が二人だ…そろそろこういう仕事が分かる年頃だ…かみさんには辞めるよういつも言われてるよ」

その時…車内の赤ランプが警報音と共に激しく明滅した…スピーカーから指揮官の緊迫した声が流れる…

「戦闘準備!やつは国道を北上中…まもなく当車両と接触する…ドア解放と共に一斉にかかれ!」

道路の脇に入ったのか輸送車はガタガタと揺れ速度を急速に落とした…

やつの戦闘バイクの甲高い音が徐々に近づいてくる…

「先輩…」52号がおれの戦闘スーツを震える手で掴む…
「落ち着け…みんなで力を合わせれば必ずやつを倒せる!」

輸送車のドアがいきなり開いた!
「降車!戦闘開始!」

やつの動きは尋常ではなかった…戦闘バイクから文字通り飛び降りると我々の中を黒い影のように走り抜けた。
何人かの仲間が弾き飛ばされて絶命した…

いつの間にかやつは52号と対峙していた…
「せんぱーい」

おれは全ての力を振り絞ってやつに組み付いた…
やつは少し驚いたようだったが怒りに目を赤く光らせながらおれの首に手を回した…

「くそ~裏切り者め…仮面ライダー!本来ならお前はおれたちショッカー戦闘員のリーダーになるべき改造人間だったはずなのに~」

ライダーは少し首をかしげるようにおれの顔を見ると…何も言わずおれの首を軽々とへし折った…

周りの仲間たちが口々に叫ぶ「イー!」「イー!」という声が次第に遠ざかっていくのがおれの最後の意識となった…
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