静かな鳥

スノー・ロワイヤルの静かな鳥のレビュー・感想・評価

スノー・ロワイヤル(2019年製作の映画)
3.5
「息子を殺された父親がキレて復讐に燃える」という"いつもの"リーアム・ニーソン映画の最新作──ではあるのだが、本作はこれまでのとちょっと毛色が違う。 アクションシーン自体は比較的少なめで、いい意味で肩の力が抜け切った黒い笑い満載のフィルムノワール調で魅せる。それはさながら『ファーゴ』に、『ウインド・リバー』の要素とタランティーノのちんたらした会話劇をブッ込んでしまったような。そんなの、面白くないわけないじゃないですか。

ステラン・スカルスガルド主演、ハンス・ペテル・モランド監督のノルウェー映画『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』をモランド監督がハリウッドでセルフリメイクした作品。オリジナル版は未見だが、予告編(https://youtu.be/7cG-exgIwPQ)を見る限り映像面はロケーションと役者を替えただけでほぼ完コピっぽい。画面の構図がそっくりな所もあるし。

本作の大きな特徴は、作品全体に漂うオフビートさだろう。物語の始め、遺体安置所にて主人公が息子の亡骸と対面するシークエンスでの、検死台のペダルを踏むキコキコ音の"笑っていいのかどうか分からない"妙な間の悪さ! その後結構あっさりと復讐に乗り出したニーソンは、「悪党を取っ捕まえる→雇い主の名前を聞き出す→簀巻きにして川の中へドボーン」を何度か繰り返す。人が死ぬと、画面が暗転し十字架マークと共にお悔やみテロップが表示されるのがシュール。思いのほかサクサクとかなりの人数が亡き者にされていくシニカルさ。やがて物語は「父親 vs. マフィア」の構図だったのがどんどんややこしくなり、あれよあれよと雪だるま式に事態は拡大していく。

マフィアのボスの幼い息子に除雪車のカタログを読み聞かせたり、除雪車に乗せてあげたりするニーソンはただの「孫を可愛がる爺」にしか見えなくて笑うし、殺しの最中に疲れてきちゃってハーハー息を整えたり、クライマックスの銃撃戦でひとり状況が掴めずあわあわするのにもニヤニヤ。舞台が雪原なのに「純白の雪が真っ赤な血に染まる」的なお決まりのショットは抑えめであり、「(家から)出てった」という台詞のみで処理されるローラ・ダーンのあまりに雑な扱いは早々ギャグの領域。エンドロールの遊び心は良い。ダラダラとしたしょうもない会話のやり取り(それが味でもあるのだが)と、ローペースな話運びもあってこの手の映画にしては尺が長いのが少々気になる。

だが何と言っても最高なのが、あの馬鹿馬鹿しいオチ。思わず乾いた笑いが漏れる。てかお前、まだ飛んでたのかよ。個人的には、昨年の『ミスミソウ』を思い出さずにはいられなかった(それにしちゃ血が少ないけど)。
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