あんじょーら

私、オルガ・ヘプナロヴァーのあんじょーらのレビュー・感想・評価

3.8
トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ監督   crepuscule films   シアター・イメージフォーラム


1973年に実際にあった事件を基にした映画です。どこまで事実に即しているのか?は不明ですけれど、かなり忠実な監督の意図を感じる事が出来たのが、この作品の評価に普遍性を持たせていると思います。


学校へ行かねばならない朝に気分が優れないオルガ(ミハリナ・オルシャニスカ)は・・・というのが冒頭です。


ネタバレではないと思われますし、私もだから観に行こうと思ったので、宣伝にも使われていますけれど、チェコ最後の女性死刑囚22歳、の話しです。

ネタバレは避けての感想ですけれど、かなり好感持ちました。


非常に特異なキャラクターである、ある種恵まれた環境に生きる20代の女性が、どのような経緯で事件を起こしたのか?という事を、恐らくかなり忠実に映画化しています。そして無駄にセンセーショナルにしようとしていない、恐らく盛りは少なめだと感じました。何を見せたいのか?という監督の意匠を感じられます。

裕福な家に生まれ、しかし、自尊心を満たす事が出来ず、コミュニケーション力の低い女性であるオルガの、何をもって自尊心を満たせるのか?をまず描いていくのですが、これもwiki調べではありますが、ある程度事実のようです。学校になじめず、家でも疎外感を募り、病院、職場を転々とするものの、家族からの援助なくては生きていけないオルガ。そして、自らの置かれた状況を自ら好転させようとしているのか?という部分を嫌が応にも見せつける監督の視点、カメラワークや画角含めて、客観性を感じました。

観た人が、どのように判断するのか?意見が分かれる可能性も含みつつ、しかし丹念に描いています。

ある場面で、この映画を終わらせる事も出来たと思うのです。

しかし、監督はその後まで映画化している。

この点から、私はこの監督は、観客に判断を任せていると感じましたし、事実、オルガは手紙を残しているのですが、その言葉をどのように受け取るのか?も判断を保留していると思いますし、観客に委ねています。

いくらでも、センセーショナルに出来たと思うのです。

しかし、そうはしなかった点を、個人的には評価したいし、好感を持ちました。


いわゆる犯人への共感を基にした映画的なカタルシスを求めなかった映画ですけれど、もちろん、物凄くスリリングです。


しかし言葉の強さ、選び方、凄くイイです。予告で使われているので引用しますけれど、

「サイコパスでも、私には見識がある」

こういうのは見事。フックとしても上手いです。でも本当にこの言葉を使ったのか、は不明。


何故人が人に危害を加えてしまうのか?が気になる方に、オススメ致します。

ニトラムを早く見ないとな、と思いました。

ネタバレ在りの感想はコメント欄にて。