馮美梅

テッド・バンディの馮美梅のレビュー・感想・評価

テッド・バンディ(2019年製作の映画)
3.5
シリアルキラー「テッド・バンディ」
彼を愛した女性リズの視点からみた彼の姿が主体なので、連続猟奇殺人者という側面ではなく、リズに対しても彼女の娘に対しても、普通に愛され、優しい彼氏として描かれ、だからこそ、リズがニュースで観た似顔絵を見たときのショック、そしてその後のテッドの逮捕と脱獄、裁判、判決までの苦しみが描かれています。

テッド・バンデイの事を知らない人がこの作品を観たら「本当にこの人、殺人者なの?」と裁判を見に来ている女性たちみたいに感じてしまいそうになるし、劇中にそのような彼が実際反抗を犯しているシーンは最後の最後しかないので、事件の事、彼の末路を知っている私でも一瞬「えっ?」と混乱しそうになった。

最初に逮捕されて、投獄されている時も突然飛び降りる動作を何度も何度も繰り返して、何してるんだ?と思ったらのちの逃走のための準備をしていたり、逃走中も、服を脱いでその一部をカバンにして、普通に街を歩いていたり、弁護人が気に入らないと自分で自分を弁護したり、テレビのネタとしてはこれほど面白いキャラはいないと言わんばかり。

しかし、当時の裁判などの映像がたくさん残っているので、役者さんたちの再現度が凄い。どこまで作られた映像で、どこまでが当時の映像なのかとか含め。

キャストも意外性があって、びっくりした。
主役のテッドを演じたザック・エフロンは勿論のことだけど、リズを演じたのはフィル・コリンズの娘さんなんですね。何よりお驚いたのは、天才子役と言われていたハーレイ・ジョエル・オスメントさん。リズの会社の同僚でのちにリズを支える恋人になる人物だけど、ひげあった方が似合うね。なかなか素敵な役でした。

裁判官にはジョン・マルコヴィッチが演じていて、法廷でテッドと対峙するシーンは見ごたえありました。

最後、刑務所のテッドに会いに行ったリズとのやり取りのシーンは緊迫したし、唯一犯行の様子がわかるシーンでした。愛する人、自分や子供に愛情を注いでくれている人が、何十人、いや何百人も女性や幼子を殺したり、その後、強姦してるかもしてないと思ったら、本当にどうしたらいいのかわからなくなるだろうし、自分や娘も被害者たちと同じようになるのかもしれないと思うとどうしようもない感情になるよね。

でも彼女は愛していながらも警察に通報したわけで、本当に心の葛藤は計り知れないものだったろう。そしてもう1人、キャロル、この人も凄いよね。そんな彼を愛して、子供産んじゃってるんだから。

人間というのは本当に怖いもんです。

でも面白い視点で作られた作品でした。
馮美梅

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