CHICORITA主任

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

4.9
1920年代にアメリカ・オクラホマ州オーセージ郡で起きた、石油による富を奪う為に白人が数百人ともいわれる先住民を殺害した事件を描いた実録映画。

ラジオ番組アフターシックスジャンクション2の試写会イベントに当選し、ひと足先に鑑賞させてもらいました。

3時間26分の長尺ながら、それを感じさせない映画としての面白さ・完成度の高さかはさすがのスコセッシ監督作品。

とにかく人間の悪性、強欲さ、心の弱さ、底の浅さ…そういったマイナス面をひたすら見せられる感じで、酷くて辛いのだけど目を離せない。そんな鑑賞体験でした。
そして最後のオチとなるFBI初代長官エドガー・フーバーの所業のえげつなさ!この世には正義なんてものはないのかもと思わされます。
しかし、ラストのくだりには現代にも残された最後の希望的なものが見えて、少し救われました。

役者陣の演技も見事の一言。特に主人公アーネストの人としての浅はかさ、しょうもなさを表現したレオナルド・ディカプリオの演技はまたキャリア最高を更新してみせたのではないでしょうか。事件の黒幕であるキングことヘイル役のデニーロも、人を惹きつける魅力と人を操り悪事を働く残虐さを併せ持つ人物像を演じ切る貫禄の演技。アーネストの妻モーリー役のリリー・グラッドストーンも、夫たちの悪事に気付きつつも縋らずにいられない弱さを見事に表現していました。

実際の事件を基にした映画ですが、題材となった大量殺人事件は、原作となったノンフィクションが2017年に出版されるまでは、ほとんど忘れ去られていたというのにも驚かされ、恐怖を感じます。
どんな悲劇も時間の流れで忘れられてします、ならば映画人としてそれを娯楽という形で語り継ぎ残していこう。そんな製作陣の矜持が感じられる一本でした。

上映前後には、ライムスター宇多丸さん、アナウンサーの宇垣美里さん、映画ライター村山章さんによるトークがつき、作品理解を深めることができました。原作を読んでの2回目が効く作品とのことなので、私も公開されるまでに読んで、2回目鑑賞に挑もうかと思います。
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