Fumi

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのFumiのレビュー・感想・評価

4.9
この題材で3時間半という長さを感じさせない映画であることがなによりもすごい。冒頭からグッと心を掴まれて離すことなく最後まで観た。
この夏にこの映画の原作本、花殺し月の殺人を読み一体どんなふうにマーティンスコセッシは映画化するのかと思ったが、傑作と言われている原作すらを凌駕する素晴らしさだ。

内容は1920年代、オイルマネーでで富を得たオクラホマ州の原住民オセージ族が相次いで不審死を遂げていく、その実際の事件の謎に迫るノンフィクションノベルがベースとなる。

原作に忠実でありながらも、大きく違うのは史実をただ淡々と描くのでなく主な視点をレオナルドディカプリオ演じる、オセージ族のある1人の女性と結婚した白人男性にしているところだ。それこそが素晴らしい。そしてこの部族に信頼の厚い同白人男性で叔父のヘイル(デニーロ)。この2人の絵力と掛け合いそれだけでもすごい。

ディカプリオ演じるアーネストを通して自分自身の中にある感情や意識に気がつかされ、また同情心すら抱いてしまうその構造が素晴らしかった。ラストの締めくくり方、この不快感こそがマーティンスコセッシ監督による答えであり我々への提示であり、非常に考えさせられる。ちょっと度肝を抜かされた。

撮影や演出、プロダクションデザインまでの全てが気持ちよく流れるように進む。まさしく映画的な映画だと言っていいだろう。

時間を気にして観るのを悩んでいたが、本当に観てよかった。いつもならトイレ休憩に行く人が多い劇場なのだが今日はほどのいなかった。引き込まれてたのだろう。原作読んだのにここまで違和感を感じない作品も珍しい。いやむしろこっちの方がいい。私がいうのもおこがましいけど、マーティンスコセッシ、全く衰えていないな。
Fumi

Fumi