脳みそ映画記録

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの脳みそ映画記録のレビュー・感想・評価

3.8
 ディカプリオのどうしょうもない小物感とデニーロの底のない人心掌握の怖さがめちゃくちゃ来るものがあります。

 このオーセージ族の連続殺人については正直この映画で始めて知ったくらいで、原作のドキュメンタリー本も未読です。
ひと言で言えばまぁ、搾取され続けるインディアンと骨の髄までしゃぶり尽くす白人の事件なのすが、原作本はFBIの誕生という副題がついています。

 FBIの前身組織が颯爽と速やかに解決したというプロパガンダとしても利用されている事件でもあり、劇中でも出てきますがそのプロパガンダの一環としてラジオドラマにでエンタメとして消費されたというどこまで行っても嫌な感じですよね。

 FBIとしては輝かしい走り出しの話にしないといけないので、ビルヘイルが一人大悪人として吊るし上げればそれで良かったでしょうしね。本当にあの裁判が事実かどうかも今となっては疑わしいです。

 この映画も機に事件を知って考えるのはいい機会なのではないでょうか。

 俳優の話に戻りますが、これブレンダン・フレイザー出てくるんですね。
 やっぱあのめちゃくちゃいい声のヘイル側の弁護士役なんですが、今年は『ザ・ホエール』が良かったから、ちょっと嬉しくなりました。これからもどんどん活躍してほしい!

 アーネストは本当に小物ではあるのですが、自分の信じたい事を信じてしまうという非常に人間らしいといえば人間らしいんですよね。きっとインスリンが毒なのも薄々疑ってはいたのでしょうけど、その確証を得るのが怖くてできなかったというのは彼の弱さの象徴的な事象でしょ。だって本当に毒であれば明確に叔父も医者も彼を騙していたってことになるし、毒を打ち続けた自分という事実も生まれてしまうから、それなら薬効なく愛する妻が衰弱したほうが心の安定が保てるから。
 一方でバイロンは何なの??こいつの立ち回りめちゃくちゃ怖いじゃん。
 こういう人間らしい矮小さが本当にリアル。流石はスコセッシですよ。



 3時間超えという長時間の映画ですが、常に緊張感もあり目が話せない作品です。
 マジで素晴らしいのに何でパンフレット作られてないんだ!!!これこそ事件背景とかインタビューとかで補完したかったんだけど!