へたれ

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのへたれのレビュー・感想・評価

4.3
良かったとこ1 スコセッシの集大成&円熟したテンポ
集団殺人事件というテーマなのに、「グッドフェローズ」や「カジノ」のような音楽とキレの良い編集と突然の暴力による語り口を存分に活かして、まさにスコセッシ映画としか言えない作品になっていた。
単に過去のフォーマットの踏襲ではなくて、ナレーションによる自分語りはもう使っていないし、インディアンたちの文化に触れるシーンはむしろゆっくり描かれている。語り口が多様でスピードも緩急ついているのは、この映画のように歴史を伝える映画としては特に効果的だった。

良かったとこ2 リリー・グラッドストーンの眼力
スコセッシのギャングものではお馴染みの「悪い奴らがやりたい放題」という枠組みは踏襲しつつも、リリー・グラッドストーンが演じたモリーの存在感が、いつものスコセッシ作品と一線を画していた。この役の史実の上での重要さ以上に、ディカプリオに対して容赦なく浴びせる見透かした眼力が異常。

良かったとこ3 劇伴
ロビー・ロバートソンの遺作になるらしいけど、むしろ今までのスコセッシ映画の中でも1番活躍するぐらいオリジナルの劇伴が良かった。既成曲は時代を表すために使われる一方で、この映画の通奏低音を成しているのはシンプルなリズムとギターを主体としたオリジナル曲の方。殺人事件ではあるがスリラーではないというこの映画の微妙なラインにぴったりだった。
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