藍紺

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの藍紺のレビュー・感想・評価

4.1
スコセッシ作品の中で散々語られてきた暴力による支配が今作では特に残酷で惨たらしかった。エンドロールが流れる頃には私もグッタリ。人が群れを成した時に現れる暴力の連鎖と搾取の恐怖に打ちのめされた。

アーネストはモリーに対して後ろめたさを感じてはいるが、それは彼女が家族だからであって、オセージ族に危害を加えることに対しては全く何の罪悪感も持っていない。先住民に対する白人の無自覚な選民思想が映像の至る所に滲み出ていて恐ろしかった。信念を持たない男が結果的に最悪な末路を辿る。

エピローグ、当時実際にあったラジオドラマを再現しており、その内容にも愕然とさせられる。

白人視点の映画になっているという批判を見たが、私は今回初めて100年前に起こった悲劇を知った。アメリカでも知っている人は少ないとのことだし、こうやってスコセッシが映像化することで広く知られるキッカケになれば良いと思う。作品を通してオセージ族の風習や民族としての誇りをスコセッシなりにフィルムに収めようとしているのは伝わった。

ディカプリオもデ・ニーロも上手いけど、信念と諦念の入り交じった複雑なオセージ族の女性モリーを演じたリリー・グラッドストーン、彼女の演技は本当に素晴らしかった!
藍紺

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