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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのTPのレビュー・感想・評価

4.5
 原作はFBIの前身であった捜査局の特別捜査官ホワイトらの活躍を中心とした内容なのだが、主演のディカプリオが敵役であるデ・ニーロ演じる人物の甥を演じることになり、オセージ族から戦略的に石油鉱業権を奪い取る犯罪側の描写が中心となった。
 その結果、ディカプリオVSデ・ニーロというありがちな構図ではなく、お互いに信頼/裏切りあうといった複雑な人間模様が浮き彫りになったのだと思う。

 そして、かつてスコセッシと名コンビだったデ・ニーロと、最近のスコセッシ映画でほぼ主役を務めているディカプリオという二人の、スコセッシが育て上げたとも言える名優の演技が、ほとほと素晴らしい。
 お互いに表面的な顔と裏側の顔を持ち、一方でお互いに人に対する愛情も持ち合わせつつも、一つの目標を共有しながら、危うい信頼関係の中で長年の策略を成就させようと人生を送る。
 もちろん、デ・ニーロが作り出す、恐ろしい策略を持ちながら表面的にはそれを全く見せない憎々し気な人物像は素晴らしいのだが、本作は何と言ってもディカプリオだろう。
 非常に複雑な内面をもち、外環境的にも翻弄される、一人の弱い男を長時間に亘って完全に観るものを魅了する演技を披露。
 いや、これは本当に10年に1度観られるかどうかというようなすごい演技だと思う。

 この二人の名演技を中心に、ディカプリオと結婚するオセージ族の女性を演じるリリー・グラッドストーン(落ち着いた、しかし頭脳明晰で行動力もある女性像が素晴らしい)というアクセントを絡ませ、また一見普通の人々のように見えて人種差別や湧いた金をむしり取ろうという邪悪な、当時当地ではもはや常識となっていた潜在意識を併せ持つ白人移民を丁寧に描くストーリーもその構成も非の打ちどころがなく、3時間46分という時間をほとんど感じない。
 また、インディアンとの混血で、ザ・バンドの中心人物だったロビー・ロバートソンの音楽も印象的だ。

 2002年の「ギャング・オブ・ニューヨーク」より後の20年間、スコセッシ監督8作品(ドキュメンタリー映画を除く)の中で(「ディパーテッド」と「シャッター・アイランド」は観てないが)、私的には間違いなく最高作だと思う。
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