06

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの06のレビュー・感想・評価

3.7
アメリカ先住民である、インディアンのオセージ族。自分の土地に石油が湧き出してしまったため、一夜にして大金持ちとなり、それを妬んだ白人に殺害され続ける物語。驚くほど不自然に一族の皆が死んでいくのに、だれも捜査してくれない孤立無援状態。しかも友達だと思ってた白人は、敵。


3時間半を長いとは感じなかったが、2時間で十分な映画だった。
ディカプリオ演じる主人公だが、こいつがすごかった。面白い位、自分の頭で考えない。オセージ族の女と結婚し、妻の言いなりにはなるが、決して彼女の味方にはならない。むしろインディアンの土地を狙う叔父の言う事を聞き、妻の一族を害していく。しかもそれを、自分の罪だと思っていないのだ。何故ならば、自分は言われた事を実行してきただけだから。そう見えた。

映画前半のオセージ族は随分と苦渋を舐めさせられる。後半やっとFBI(この時期はまだFBIという組織ではないが)の捜査の手が入り、いわゆる「ざまぁ」ターンが始まる。……かと思いきや、ここでも主人公の自己保身のせいで邪魔が入る。

そんな、何も考えて居ない故に、何を考えてるかよくわからない主人公に付き合うのには、三時間半が必要だったのだろう。でも悪人でも善人でもない主人公を観続けるのは辛い。最後の妻の問いかけに答えるワンカットの為だとしても、やっぱり2時間で十分だった。

印象に残ったのは、オセージ族の立ち位置だ。この時代同じく迫害された人々として黒人達が挙げられるが、彼らは団結して人権を勝ち取った。しかしオセージ族は違う。裕福な彼らを、白人は友達ヅラをして表面上は敬う。だが内心は軽蔑して、金を持った家畜とみなしている。
彼らは法の施行がなされた新時代に、手斧を持って一族の敵を取ることが出来ない。だが権力もないので、事件の解決を白人に頼ることになる。映画の最初から最後まで、当事者なのに蚊帳の外。そんな少数民族の無力さ、アメリカの歪みを感じた。


ここから、若干ネタバレ。



「保険金目当てで殺したいから、自殺に見えるように前から撃ち殺してくれ」と殺し屋に頼んだのに、後日後ろから撃たれた死体が見つかった。もちろん保険金は下りず。

「お前!前から撃てって言ったろう!!ちゃんと頼まなかったのか!?」「頼んだよ!自殺にみえるようにって!!なんでこうなったのか、俺にもわからない!!」とディカプリオ達白人は内輪揉め。

この「伝達ミスを一切してないのに、オーダーと違ったものが上がってくるあるある」親近感しかなくて面白かった。普段の仕事でこういう事はよくあるが、万国共通なのだなと、なんとなくほっとした。

しかも殺し屋も、トラブルの結果ミスって後ろから撃ったのではなく、「自殺に見せかけて前から撃って殺せ」というオーダーを忘れて「撃って殺せ」だけを遂行したのだ。
相手が死んだから、挽回も出来ない。

思えば、主人公のディカプリオしかり、この殺し屋しかり、爆弾の量が多すぎた別の殺し屋しかり、騙されて強盗に入って死んだ奴らしかり。この映画の白人は、結構短絡的な愚か者に描かれている。もしかしたらそこにも何か、現代社会へのメッセージが隠れているのかもしれない。
06

06