「物語り」としては圧倒的におもしろいが「人語り」として薄っぺらすぎる。
演技や演出が優れていようと、これでは見透かされる。
今作のテーマなら主人公はデニーロにすべきだし、なぜ愛情の深い人物(ディカプリオ)が残忍な悪に染まるのか、その納得感がない。
物語もあくまでキャビアやトリュフのような「珍味」であって、「ダンスウィズウルヴス」の逆ストーリーで珍しいから楽しめるだけで内容は平凡すぎる。
人語りが薄っぺらい最大の要因がセリフ。ただストーリーをテリング(説明)してるだけ。人物の性格も「俺は女好きだ」とか説明してしまって何も漂ってこない。
最近見た石井裕也の『愛にイナズマ』の台詞からは、会話劇のなかに登場人物の性格や人生観、たぶんこんな経験をしてきたんだろうな、という匂いが漂ってくる。映画はこうあって欲しい。
接客マニュアルや道具は充実しているのに、本当の接客が少なくなってるいるのと似ている。近づくべきは技術ではなく心。
ディカプリオやスコセッシは長年同じ失敗を繰り返している。映画人はアスリートと違い、年齢の衰えによる引退がないのが長所であり欠点。
パンフレットの販売が時間外だったが、これは買わなくていい。