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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのkenのレビュー・感想・評価

3.5
2023年劇場鑑賞48作目

長いからと渋っていたら上映が終わってしまっていたジョン・ウィック4とは裏腹に、長くてもいい。いや、長ければ長いほどいい。長尺映画が多い印象のスコセッシ作品において、一度たりとも退屈したことがないため、その長さはご褒美でしかない。いたずらに長引かせるのではなくテーマの背景にあるリアルな人間関係とキャストの魅力を引き出してくれるから。206分!おそらくこれまでに劇場で鑑賞してきた中でも最長記録でしょう。

ひたすらに頭の悪い男の物語。ディカプリオが本当に哀れ。デ・ニーロの言いなりとしてどんどんデニ色に、つまりは彼の思考に染まっていく中身の無い空っぽな男。他の映画、他の俳優だったならばこの手の役は大の苦手。物語の重要なシーンでヘマをやらかしたり、主人公の足を引っ張る脇役は観てるだけで不快感を煽る。でもディカプリオが演じるとイキイキしていて不思議と魅力的に映る。叔父を頼りにしながらも同時に怯えている部分も見え隠れする。守りもしない約束や思ってもないことをベラベラと周りに述べる姿は当代きってのペテン野郎。ウルフ・オブ・ウォール・ストリートに通ずる部分があった。

そんなディカプリオの演じるアーネストは叔父の口車に載せられ富豪の女性と結婚、遺産が自分のところに転がってくるように次々に身内を消していく。自分の妻の姉妹なのにだよ!?ネイティブ・アメリカンではなかったらこんなことは起きなかったのか?それとも相手が誰であれ、デニーロはお構いなく暗躍したのだろうかと気になった。
アーネストの妻、モリーの旦那に対する気持ちの変化が面白かった。途中からこいつバカだと、それでも愚直に自分のことを愛してくれるから、そこだけは嘘がないから、と信じ続けたように見えた。持病に糖尿病を抱えるモリーは幸運にもその当時、世界でもわずか数人しか入手することのできないほど高価なペニシリンをデニーロの手回しで取り寄せることができた。当時の人や正しい知識のない人にとってはそんな訳のわからないものを投与されるのは怖いはず。それでも旦那が言うなら信じてみようと耐え続けた。そんな妻にも最後には愛想を尽かされる。
裁判後のシーンで言及されるこの件、アーネストは気づいてはいたけど言えなかったのか、それとも最後まで本気で"良い薬"だと信じていたのか。どうも後者っぽく思えた。思い込みや洗脳の恐ろしさも感じられる。

ブレンダン・フレイザー、ジョン・リスゴーなど気づけると嬉しいキャストも!
まさかのご本人登壇!
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