Taji

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのTajiのレビュー・感想・評価

3.8

アイリッシュマンぶりのスコセッシ作品劇場鑑賞。

今回も御多分に洩れず206分という長尺。

近年のスコセッシは、とあるテリトリーで栄華の限りを尽くしたものの発展と凋落を描く、ヒトの挽歌を淡々と描く味を感じる。

今回もまさにそう。
キングと呼ばれるデニーロと、彼のもとを訪れる甥っ子ディカプリオ。
彼ら白人がオセージ族というネイティブアメリカンの財産と石油を狙い暴虐と搾取の限りを尽くす。
最も裕福な部族と呼ばれたオセージ族の予習はあらかたしておいた方が良いと感じたが、あらすじ程度理解していれば乗り切れないことはないはず。
意外にその辺は丁寧。

ディカプリオとデニーロが作品の中心にいるわけだが、助演のリリー・グラッドソーンの好演が見事だった。
言葉少なに構え、絶望混じりに全てを見透かすようなどっしりとした静の演技が素晴らしい。
おそらく本作は今年度オスカーの主要部門のほとんどでノミネート入りするだろう。
それぐらい重厚で、各方面の才能が随所に光っていた。

自国、自人種の暗部に切り込み、エンタメとして消化することを拒んだスコセッシのスタンスにはリスペクトを送りたい。
オセージ族の人々は「この映画は白人のために作られている」と言っているようだけど…難しい。

個人的にスコセッシは相性悪い寄りだけど、今回は長時間を気にすることなく楽しめた。

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