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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのmayaのレビュー・感想・評価

5.0
スコセッシの何がすごいって、アイリッシュマン作って普通の作家なら綺麗に引退しそうなところをコレぶつけてくるところですよ...
スコセッシは、その人自身が今の「アメリカ」の歴史の証人みたいな存在になりつつあると思うんだけど、それを自覚した上で、ジャンルとしてはマーダーミステリーに初挑戦しながら、またみたことのない新しい映画をみせてくれる。
はっきりとしない、しかし確かにそこにある緊張と違和感が、徐々に高まっていき、「インスリン」の1シーンでスパン、と落ちる。解釈を観客任せにせず、「この男はコヨーテだった」とはっきり書く。
デニーロの「自分に圧倒的な力があると勘違いし続ける、マッチョな世界である程度成功体験を積んでしまった男の惨めでズレた老後」は、ここに至って研ぎ澄まされている。「強そうにしてる奴らなんて所詮この程度の耄碌ジジイなんだよ」という視点をずっと提示してくれるの、本当に勇気をもらえる。
あと最後のラジオ収録...ディカプリオが好きで「j.エドガー」をみていたので、あれが何のメッセージだったか恐らく理解できたと思う。「この映画の語り手も白人にすぎない、こうしてバカみたいに演出して、視点を切り取り、結局白人のプロモーションに物語を使う」というメッセージなんじゃないだろうか。最後のgメンがでてきてからがやたら007的な、それこそFBIでエドガーがテレビを使ってコマーシャルしたような物語になっていった違和感が、ここで明らかになった。スタンリーよろしく登場するスコセッシが、「その手」を使う目的が、映画の本質をダメ推しのように突きつける役割を果たしている。最高。
この映画に「もっと短く編集してほしい」みたいな感想を出すのはお門違いすぎる。なんでもかんでもテメェのエンタメ消費のために作ってもらえると思うなよ、と思う。逆にマーベルが3時間やりやがったらそれは全員ブチキレる。ていうかかなり「マーベルフランチャイズ映画がある時代」を意識して作られたよね本作...わりとスコセッシの強めのブチギレを感じた。わかる、「ワカンダ」やった挙句が「エンドゲーム」なの、まじで白人の見た甘い夢だもん。映画はただのエンタメではない、ということをスコセッシはこの映画でもって見せつけてくれたと思う。
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