Drエメット

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのDrエメットのレビュー・感想・評価

4.1
とてもおもしろかった。

まず映画として、とてもおもしろかった。ディカプリオやデニーロはもちろんだけど、モリー役の人の演技が素晴らしかった。
映画の冒頭で、モリーが「この人には何を言っても無駄だ」となるシーンがあり、こういうことあるよなと思っていたら、終盤でディカプリオに対して同じ表情をしていた。セリフでの言及はなくても、表情だけで同じ感情であることを伝えてくる演技がすごいなと思った。

内容については、この映画は人種差別という問題と、資本主義によって人の命以上に金を大事にするという問題の2点が挙げられているように感じた。

人種差別については、この映画は実態を映しているように感じた。
ディカプリオがモリーを口説くシーンで、肌の色が美しいというシーンがある。これはディカプリオからすると人種なんて関係ないということを言いたかったシーンだと思うのだが、かなり上から目線な感じがした。
現代の映画において、ホワイトウォッシュはかなり問題視されるのに対して、逆に原作白人のものを非白人が演じることに関してはなんの問題視もされない。これは、白人が優位に立っているからで、バービーで言及していた「むしろ女性のが就職に有利だよ」みたいな発言と通じる部分があると思った。白人に特権があることを当たり前だと思っていて、みんな白人に憧れていると思っていないと出ない発言のように感じた。
オセージ族の人が白人に対して「あなたの肌の色は綺麗だ」という発言をしているシーンが映画に含まれていたら大炎上するのではないか。それは差別する側とされる側という意識を、白人側が持っていることが表れている気がした。

ただ、原住民側も白人に対する差別意識があるのではないかとも感じた。娘たちが白人と結婚していくのを嘆く母や、族長の白人に対するあたりの強さなど、原住民側からしても白人と同じとされたいわけではないのではないかと感じた。

本来、個人的には民族やら人種やらは正直くだらない話だと思っている。地球上にいろんな生物がいる中で、同じ人類であり、ホモサピエンスという種である中で、何年前までに一緒に暮らしていたら同じ人種で、ここ以降で出会った人は違う人種ですっていうのは、歴史をどこで区切るかだけの話であり、差があるというのは気のせいであると思う。元々はみんなアフリカ出身のホモサピエンスという種なはずである。数千年前に北アメリカ大陸に上陸したか数百年前に北アメリカ大陸に上陸したかの違いで差別が起きている。耳たぶある人が耳たぶない人を差別してるくらいの話。

愛する妻に対して、どこか怪しいとは思いつつも注射を打ち続けるディカプリオの姿が、明確な悪意があるわけではなくても相手を傷つけてしまう庶民の罪みたいなものを表していると感じた。ディカプリオは終始、そんなに悪いと思っていない感じが、怖いと思った。

お金への執着についての話と捉えると、かなり恐ろしいと思った。
本来、お金を得ることが目的ではなく、お金を得て幸せを獲得することが目的だったはずなのに、幸せよりもお金が優先されていく実態が描かれていた。デニーロやディカプリオはお金はあったが幸せには見えなかった。手段と目的を間違わないでいることの重要性を感じた。

この映画の最後のシーンでは、このような映画をみて考えていること自体をメタ的に捉えるような構造になっている。金のために殺される人たちの話を題材とした映画を、我々はお金を払って娯楽として見に行っているという点を意識させられた。

やっぱ、自分をキングと呼ばせるようなやつは信じない方がいいね
Drエメット

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