Ninico

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのNinicoのレビュー・感想・評価

4.9
2023年のベスト。3時間24分の超長尺であるが、あまりの物語の面白さに衝撃を受け、息が止まりそうになりながらスクリーンを見つめ完走。

白人が先住民(ネイティブ・アメリカン)に何をしてきたかの歴史が描かれている。
題材となった実話は、居留地に石油が出たことで富を得たオセージ族の財産を奪う目的の権力者に巧みに操られ、オセージ族の女性の夫である白人アーネストが凄惨な連続殺人に加担するというものである。

情弱が情弱をカモる構造の中で、一番純粋で弱い者が命を落とす形で搾取される…。観ていて恐怖で苦しかった。
ロバート•デ•ニーロ演じる地域の有力者ヘイルが『受益権を守るために』と言葉巧みにアーネスト(ディカプリオ)に書面への署名を求めるシーンなど、震えるほど恐ろしかった。
アーネストの従順さと無能さが、目つきや息遣い、全身で表現されていた素晴らしい演技だった。また、欲望と権威への畏怖から狂っていくアーネストであるが、一貫して妻モリーへの愛情を描写したシーンだけは美しく、気持ちに嘘はなかったように見える点からも、観客は最悪な事をやっているアーネストに感情移入してしまう。

しかしその妻をも裏切る姿、気付きながら崩壊していくモリーの姿、やって来る梟。狂気と神秘の世界に惹き込まれる。

終盤のメタ構造も良かったし、ラストの先住民の儀式のシーンには言葉が出ないほど。

面白すぎて鑑賞後は疲れます。
エンドロール中は呆然と身動きも取れないでしょう。エンドロールの音楽が素晴らしく、絶対に映画館で最後まで堪能した方がいい。トイレは最初に済ませてコーヒーやお酒は飲まないでどうぞ行ってらっしゃいませ。
Ninico

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