カルダモン

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.6
1894年、オセージ族が所有する広大な草原の下で大量の石油が発見され、部族は巨万の富を得る。1920年代には世界で最も裕福な部族と呼ばれるまでになっていた。そんな中で発生したオセージ族の不審な連続殺人事件。その件数、判明しているだけで60人以上。いずれの事件も捜査はされず闇に葬られた。突如として湧き出した〈黒い金〉は呪いのようにオセージ族の行く末をも変えてしまう。

オセージ族の富を吸い取ろうとするウィリアム・ヘイル(デ・ニーロ)と甥のアーネスト(ディカプリオ)、アーネストの妻となったオセージ族のモーリー。FBI誕生のきっかけともなった史実の映画化。原作はデイヴィッド・グランのノンフィクション小説『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』。

初見後、正直3時間半という尺ではとても足りないと感じた。オセージ族の過去をもっと知りたかったし、捜査についても色々と聞きたい。贅沢を言うなら全6話12時間くらいのドラマでも大歓迎だった。

起こった悲劇については言葉もない。人を人とも思わぬ白人の搾取には怒りしかない。が、やはり人間は肌の色、育った土地や時代に関係なく結局は欲の生き物であると痛感してしまった。それはオセージ族であっても例外ではないということ。石油が湧きオセージ族は富を受け入れた。そこにはどういった経緯があったのか知りたいと思った。

たぶん私はこの映画が放つメッセージを正面から受け取れていないのだと思う。アメリカの黒歴史を現代の日の元に曝け出し今現状を見つめ直す意義も大いにあるだろうが、私はそれよりも人間のどうしようもない欲の、どうしようもなさが興味深かった。ヘイルはもちろん、叔父と妻の板挟みになっているアーネストがストラグルする様はどうしようもなさの極みではあるのだが、妻のモーリーもまた欲に負けている様子があり、どうしようもない人間味が味わい深かった。


めちゃくちゃどーでもいい話だけど、この映画のタイトルを口にする時、『アタック・オブ・ザ・キラームーン』って言っちゃうことがあって、『キラートマト』に引っ張られてる自分にハッと気付く。〈キラー〉と〈オブ・ザ〉でどうしてもね。