hama

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのhamaのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

3時間半の映画だが編集の巧みさや主演3人の演技に引き込まれ、ほとんど長さを感じなかった。テーマの重さに対して作品の構造が分かりやすく、編集や音楽、挿入される写真等で映像にメリハリがあり、リズムの良い映画だった。

特に二人の演技が素晴らしい。ディカプリオが演じるのは俗物の極みといってもよい愚かな男。オセージ族に対する悪事や妻に対する毒物の投与が悪いことだと分かっているが、それが本当の意味ではピンときていない演技が本当に良かった。それが本当にピンとくるタイミングが悪事によって全てを失った後で、本当の悪というのは、これぐらい愚かな男でないと働けないのかと思わされた。愚かさゆえに妻を愛することとその妻に毒物を投与することが両立しうる人間の姿を通して、人間という存在の複雑さを改めて考えさせられる。

リリー・グラッドストーンの演技については、全てを見透かした上でその愚かさを包み込む聖母のような眼差しがとにかく素晴らしい。夫によって投与される毒物が自身の衰弱を引き起こしていることを全て分かっているはずなのに、それを言い出せない悲しみよ…。

数年前に劇場で観たはずのアイリッシュマンの内容を全て忘れていることがこの映画を劇場で観ることを躊躇わせる一番の理由だったが、この年齢になってなお観客を惹きつける手腕に磨きがかかっているスコセッシに対して畏怖の念を感じた。
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