ゆうきさん

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのゆうきさんのレビュー・感想・評価

4.5
上映時間の長さについて触れている人が多いが、スコセッシは盟友の編集者と組んでキャリアの後期に明らかに編集のテンポを遅くしている。
私がそれを確信したのは「ギャングオブニューヨーク」や「アビエイター」あたりだったと思う。
当初はアカデミー賞を取ることができない理由とされていたが、近年の「(MARVELなど)ヒーロー映画は映画ではない」という彼の発言から汲み取れるように、今作もエンタメとして消費されることを徹底的に拒否している。
そのことはエピローグのラジオドラマで自虐的に語られているとおり。

ちなみにディカプリオは当初はFBI捜査官の役を予定していたが、役の変更を要望しストーリーの見せ方も大幅に変わった模様。
役者としてはむしろそちらの方が演じ甲斐があり、ギャング映画や罪ある男の葛藤を描くスコセッシの映画においては自然な流れだろう。

白人がネイティブアメリカンを搾取してきたアメリカの黒歴史を描いているが、1人の人間の家族に対する葛藤に縮小して演出しているのはいかにもスコセッシ的だけど、あのエピローグにて自身が追悼することでその先にある彼の凄みを感じた。

「ボーイズライフ」のディカプリオとデニーロの関係と似ていることに感慨深さを感じた。
スコセッシが80歳を超えて尚活躍しているように体力さえあれば才能は枯れないと思っている。

「アイリッシュマン」はギャング映画のレクイエムのように感じたが、今作はスコセッシの西部劇への憧れとアンチ、もっと言うならば自らの映画史それ自体に幕を閉じようとしているのかなと勝手に推察した。
ゆうきさん

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