Hiroki

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのHirokiのレビュー・感想・評価

4.2
少し時間が経ってしまいましたが2024オスカーのノミネーションがあったので軽くおさらいから!
興味ない人は飛ばしてください。長いです。

GGや前哨戦などここまでの流れ通り『オッペンハイマー』が最多13部門、『哀れなるものたち』が11部門、そして本作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が10部門と3強。
次いでバービーが7部門8ノミネート。
ちなみに日本からは長編アニメーションに『君たちはどう生きるか』、視覚効果賞に『ゴジラ-1.0』とどちらも北米で興収好調2作品。
そしてちょっと複雑な感じにはなってますが、ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』が日本代表として国際長編映画賞にノミネート。
宮崎駿は行かないと思うけど、山崎貴や役所広司を授賞式で見れそうです!
毎年の事ですが個人的にアカデミー賞本番までにはなるべく作品を観て色々言いたい勢なので、『オッペンハイマー』が観れずに授賞式を迎えるのは悲しい。
逆に『哀れなるもの』は最高のタイミングでの上映に。ヨルゴス・ランティモスだから興収的に爆発はないだろうけど。
ちなみに授賞式までに観れない主要部門ノミネート作品は、『パストライブス再会』『関心領域』『May December』『The Holdovers』あたり。
昨年とほぼ同じくらいですかねー。
とりあえず『哀れなるもの』と最高のミュージカルと話題の『カラーパープル』、昨年のパルムドール『落下の解剖学』は確実に観たい!
さて毎回物議を醸すノミネーションの2024年3大トピックス。
まず『バービー』のグレタ・ガーウィグ&マーゴット・ロビーが監督賞&主演女優賞から漏れた事。マーゴット・ロビーは大人の対応をみせてましたがいまだに信じられない。
もう一つは同じく『バービー』がなぜか脚本賞ではなく脚色賞にノミネートされた事。これはシンプルになんで?
そして最後にして最大の謎が今作が脚色賞から漏れた事。
前哨戦も含めほぼ確実と言われていただけに本当に謎なのですが、ひとつまことしやかに噂されていることがあって。
今作の脚本は監督のマーティン・スコセッシと重鎮エリック・ロスがクレジットされているのですが、実はエリック・ロスではなくPTAことポール・トーマス・アンダーソンが脚本を書いていたと複数の関係者が証言しているらしいんですよね。
それって本当だとしたら誰に得があるのか不明なんですが...
ちなみにPTAの次回作にはレオが出演予定との事で、それも何か関係しているのでは?との噂もあり。
他のノミニーを全部観れてるわけではないけど、さすがに今作が入らないということは...邪推してしまう。
まーここらへんは明らかになる事はたぶんないと思うけども。
あと個人的にAmazon製作の『AIR/エアー』『Saltburn』が完全無視されていたのも謎でした。
バリー・コーガンの主演男優賞はくると思ったのだけど...

さて長くなりましたが気を取り直して本作へ!
御大81歳のスコセッシは前作『アイリッシュマン』から引き続き配信大手とのタッグ。
元々はパラマント配給だったのが製作費がかかりすぎてAppleTVが共同出資に加わった形みたいですね。
だからというわけではないと思うが、とにかく長い。
206分。前作は210分。
それより以前の劇場公開を前提としている『沈黙 -サイレンス-』が159分、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』が179分なので明らかに配信によって時間の柔軟性が出ているのは間違いないかな。
ちなみにアメリカをはじめ世界各地で勝手に途中で休憩を挟む映画館が続出し、契約違反として取り締まりを受ける事態に。
映画館で観たけどその気持ちわかるよ。

しかしではその206分に無駄な時間があるかと言われるとほとんどないと思うし、ドラマシリーズにすれば良いじゃないと言われてもそーいう内容や構成でもない。
映画として必要な206分。
これがスコセッシの凄いところだなーとしみじみ。

内容的には1920年代のアメリカ・オクラホマで本当にあったネイティブアメリカンのオセージ族不審死連続事件が題材のノンフィクション本が原作。
これ元々は不審死を(FBIの前進組織から)調べにくる捜査官が主人公でレオが演じるはずだったのが、脚本を読んだレオが「これオセージ側が描けてないからオセージ側をメインにした方が良いでしょ!」と提案。
2年かけてほぼ出来上がっていた脚本を書き直してレオがオセージから均等受益権(居住地の鉱物資源から均等に利益を受け取る権利。売買できず、相続でしか手に入れられない。)を騙し取る白人の主人公アーネストを演じる今の形に。(ここらへんがPTA疑惑の関係しているのか?)
代わりに捜査官ホワイトはジェシー・プレモンスが。
レオに騙されるオセージ族の女性モリーをリリー・グラッドストーン、白人側の有力者“キング”ことウィリアムをロバート・デ・ニーロという盤石の布陣。

この派遣されてくる捜査官ホワイトの上司でFBI初代長官こそ『J・エドガー』でレオが演じたジョン・エドガー。まさにレオのための役だけどそれよりも物語の意義を優先させて、決してカッコ良いとはいえない役にあえて挑む。最近のレオの役選びの傾向ですね。
さらにスコセッシといえばのデ・ニーロも圧倒的な貫禄。嫌な方のデ・ニーロです。
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で同じく1920年代の男を演じたジェシー・プレモンスもハマり役、ケリー・ライカート作品常連で自身もネイティブ・アメリカンの血を引くリリー・グラッドストーンは繊細な演技で魅せる魅せる。(ちなみにリリーはオセージの血は引いているわけではなく、ブラックフィートとニミプーという別の種族の血を引いている。)

この強力なキャストでやるのがサスペンスなんですよねー。
ちょっと話が複雑なんだけどなんでこのオセージ族が狙われるかっていうと、この人たちは裕福なんですよ。
でそれはオセージ族が元々土地を追われて移り住んだ場所から石油が出て、さらにその石油を使う自動車の時代になったことで石油の価値が高まる。
そして上記の通り均等受益権というものにより、石油の権利を他人に譲渡できなくなる。
そこで婚姻によってこの辺りの石油をなんとか牛耳ろうと画策するのがキングこと悪の帝王デ・ニーロ。そしてその甥っ子のレオ。
だからいわゆる白人優勢の世の中と真逆みたいな。特殊な環境下で起こる事件なんですね。

これけっこう中盤くらいまでレオがどっち側なのか微妙な感じが続く。
キングと同じくお金のためなのか?
モリーを本当に愛しているのか?
このレオが演じているアーネストもまたダメな男で。
帰還兵なんだけど、優柔不断でお金にだらしない仕事はしたくない酒とギャンブル大好きという、THE・クズ男の具現化のような...
それもあって彼の本心みたいなものがとても読み取りづらいんですよね。
だからこそサスペンスとして素晴らしいんだけど。
でも終盤のあのモリーに少しずつ注射していた毒を、自分も飲むシーン。
毎日注射して少しずつ効いていく毒だから、もちろんそんなのちょっと飲んでも意味ないんだけど。
もーそーいう事とは関係なく、キングへの畏怖とか自分の罪とかモリーへの愛とか。
そーいうモノがすべてごちゃごちゃに混ざり合ってしまう結果としての行為。
それが痛いほど伝わってくるレオの演技。
ここを描くためにここまでの長い序章があったのではないかと思えるくらい素晴らしいシーンだった。

ラストはスコセッシ節で締め!

長くなってしまったので最後にオスカー予想。
技術賞までやってるとさらに長くなるので主要部門だけ。
基本的には『オッペンハイマー』『哀れなるもの』の2強を本作が崩せるかという感じになると思うのだけど、
作品賞は大本命は『オッペンハイマー』、次いで『哀れなるもの』と本作。
監督賞も大本命はクリストファー・ノーランで次いでスコセッシ、ヨルゴス・ランティモス。こちらはスコセッシの方がリード?
主演女優賞は本作のリリー・グラッドストーンがフロントポジションで次いでエマ・ストーン。この2人に絞られそう。リリー・グラッドストーンが受賞したらまた新しい扉が開きそう!
助演男優賞の本命は『オッペンハイマー』のロバート・ダウニーJr、次いで『バービー』のライアン・ゴズリング、ちょっと離れてデ・ニーロ。ちょっとデ・ニーロは厳しそうかなー...
もちろん前哨戦や現地予想サイトなどを元にしているので、まだまだこれから!
さてここから約1ヶ月。
楽しみ!

2024-4
Hiroki

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