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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのfumingのレビュー・感想・評価

3.6
オクラホマのオイルマネーを巡る陰惨たる謀略劇。どうやら実話らしい。
とにかく俳優の演技が素晴らしく、それを活かした作品構造が面白い。陣営や登場人物の相関もさほど複雑ではなく、同じようなタイプの映画であるゴッドファーザー等よりも誰が何をしている人なのかははるかに分かりやすい。
俳優に関しては、レオ様とかつて呼ばれ二枚目役をやらせたら右に出る者のいなかったディカプリオが泥臭い無教養で粗野なアメリカ人の役を見事にモノにしているのは名優としか言いようがない。デニーロは相変わらずというか、物腰の柔らかい好々爺とした雰囲気ながらドス黒い裏の顔を巧み使い分ける役柄が完璧にハマっており、もうこの人は今の俳優界の中でも名実ともにトップであろう。本作の空気はこれら名優達の静かで、しかし迫力のあるジリジリとした緊張感によって作られている。
また作品構造としても、徐々に侵略されていく先住民たちの視点が主軸になっている。有効的に振る舞ってはくるが、しかし真意のわからない白人達から何をされるか分からない恐怖が本作のユニークな魅力であると思う。

非常に長い映画だが、その上映時間に耐えうる濃密さと観客を引き込む力のある一作。特に物語中盤くらいまでは前のめりにスクリーンを観ていた。しかし後半はややペースダウン且つ少し集中力が切れるかなと思う。オチも個人的には少し弱いが、そこは実話をモデルとしているので致し方ないか。
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