胃潰瘍のサンタ

狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒濤篇の胃潰瘍のサンタのレビュー・感想・評価

4.2
決して出来の良い映画だとは思わない。テレビっぽいぼやっとした質感の映像に、大河ドラマみたいな役者陣。歴史モノに振りたいのかメロドラマに振りたいのか中途半端な脚本。特に後半は妙に湿っぽく、長い。三隅研次らしい外連味も安い方に働いている。

なのに、何とも言えず好き。
池波正太郎原作らしい(タイトルに激怒したらしいが)、熱くて気持ちのいい、どこか子供っぽい男たち。時代に合わせて生きたいと望みながら、結局は「侍」であることを捨てられず、己の矜持に従って滅びていく。
こういうのには弱い。メキシコ革命で西部劇をやった『夕陽のギャングたち』を思い出してしまった。緒形拳も相変わらず良い笑顔だが、近藤正臣演じる伊庭八郎が堪らない。
高橋英樹vs近藤正臣の立ち回りは、最近のベストバウト。