33年続いた子ども番組「Mr. Roger’s Neighborhood」の名物司会者フレッド・ロジャーを辿る現実に基づいた物語。
演じるのは、名優トム・ハンクス。
エンドロールに実際のロジャースの映像が流れるが、その再現度に驚く。ともあれ、今後の生き方に考えさせられるところはある良い映画だった。
I like you just the way you are.
※レビューの下部に本作のメイキングを含む映像のURLを載せておきます。余韻に浸れるので是非ご覧下さい。
ひょんな事から、彼を取材することになった雑誌記者であるロイド。彼もまた家庭環境が複雑で問題を抱えながら生活している。
冒頭から不思議な雰囲気が漂うなか、ロジャースという人間は捉え所のない浮遊感のある人物である事がわかる。
我々観客もロイドと同じようにロジャースに対しては懐疑心を持ちながら観ていくことになる。
しかし、彼への取材を重ねるに連れて、心が溶けていくような、心の内を解きほぐすような温かみを帯びた人格者であることが伝わる。トム・ハンクスにこの手の人を演らせると右に出るものはいない。
個人的なポイントはラストシーンに、なぜ彼はピアノのロートーンを勢いよく鳴らしたのか。余白を持たせ、解釈や思考を巡らせるのもまた一興。
番組内のミニチュアの街と現実との対比も面白い。テレビ番組のセットの使い方が上手く、見せ方が勉強になる。
『我々は死について話すことに気詰まりを感じる。だが、死ぬことは人間の理である。人間の理は言葉にできる。言語化できることに我々は対処する事ができる。』
実に良い言葉。胸に刻んでおこう。
【本作の監督マリエル・ヘラーによるインタビュー映像】
https://youtu.be/FR0Pfr851Zo?si=tai-nTx4ddxi-emi