ただのすず

ユメノ銀河のただのすずのレビュー・感想・評価

ユメノ銀河(1997年製作の映画)
4.1
「人を殺した人のまごころ」

本当に美しいタイトル。
白昼夢のように気が付いたら物語の中にいる。
モノクロの行雲、走る汽車、土砂降りの中の閉ざされたバス。
雨に濡れた小嶺麗奈の無垢な瞳と、
漆黒のコートを翻し毒を飼う無表情で不気味な浅野忠信。
恋心と疑心の間をゆらゆらとランプの灯のように揺れ動く、
夢中になるシーンばかりであっという間に終わってしまった。

人を殺した人の本当の心の内とは。
人殺しの疑いがあるバス運転手と出会ってしまった女車掌の話。
原作、夢野久作の短編の一遍『殺人リレー』
小説では手紙のやり取りだけでトミ子の心が表現されていた。全編モノクロ、セリフは殆どなく、じっと見つめ合うだけの二人のシーンも印象的で映像化されてより美しく幻想的になっていた。どろっとしているのも好き、でも、これはこれで好み。

空っぽでつまらない人生の中での初めての危険な恋、冒険、それに執着する。ただの死にたがりの男に。純粋に好きなんて云うよりも遥かに人間らしく理解しやすかった。