りり

ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー​のりりのレビュー・感想・評価

3.1
関わった人に不幸をもたらす呪いの絵画的な、題材自体は古風ともいえるホラーなんだけど、現代美術を扱うアート業界にフォーカスし、かつシニカルな視点を交えて描いているところが新鮮で興味深く、他のホラーとは一味違う個性が出ている作品だった。“呪い”が発現する恐怖シーンもさまざまなパターンがあっておもしろい。
 遺品を無断で持ってきたり、アート作品を売れるか売れないかでしか見ない画商や、恋人に頼まれてある展覧会に心象に反する評価を下す批評家など、己の利益を重視し芸術を食い物にする人々に天誅が下される展開は胸がスッとしないでもないけど、アートが好きな自分にとっては業界の裏側のドロドロしたおぞましさは正直ショックだな〜。
そんな感じで登場人物はみな利己的で好感が持てないのだが、商業化を最重視するアート消費の輪から抜け出した2名のアーティストの存在は希望になった。そのうちの1人が解き放たれたように浜辺で創作に励むエンドロールシーンは心に残った。

嫌なやつばかりの登場人物たちなのだが、アート業界にいるだけあってみなファッションやインテリアなど暮らしぶりが非常に洗練されていてかっこいい。その点でも見応えはあった。なんか悔しいんだけど笑。
という異色ホラーだった。
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