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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへのSのレビュー・感想・評価

4.4
父の死をきっかけに故郷の凱里へ戻って来たルオ。あてどなく彷徨うなかで、幼馴染・白猫の死や自分を捨てた母親、そして忘れえぬ女の面影が蘇る。
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後半約1時間は3Dのワンシークエンスショットでまさに夢の中。
でも近くでは2Dしかなくてみられなかった。またどこかでやらないかな。
深夜の映画館でムダに浸りながらみたい。
冒頭とかちょっとウォン・カーウァイ風だけど、中国映画いいな。こういうの創れて、商業的にも成功するっていいな、もっとみてみたい。
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現実と記憶と夢の谷間にある、やわからくてやさしい場所。
ノスタルジーと鈍い痛みが、甘く響く。
私的な思い出に溢れて、だからこそとても普遍的な、
こころのやわらかい場所にすっと辿り着く。
ふと振り返って、何度もぼんやり眺めたい、没入したい、そんな映画。

前半と後半をつなぐ映画館のシーンと
「映画と記憶の違いは映画は常に虚構だが、
記憶は現実と虚構が入り混じり、目の前に現れては消える」
っていう言葉通りの創りだなと思った。

前半は、凱里に戻って来たルオの現実と、(バイアスがかかった)ルオ視点での過去の記憶。時系列も、正誤も、映像もぼんやり捉える感じ。

後半は、一発撮りでリアルなルオの視点で追体験ができるのに、常に虚構。後半からがむしろ映画なのかもしれない。
映画のやさしさを感じる、セラピーみたいな。

後半はほんとうに夢の中にいるような映像でやさしいのです。
夢の中に夢があるような、続いているようで続いてないような感覚で(夢ってだいたい一晩で3本立てとかな気がする)

心のなかで節になっているわだかまり、過去の遺恨を、
なんども夢のなかでやり直して、向き合い、昇華していくような、ルオの心象世界をみてるようでした。

郷愁って今現在の実際のその場所やその人にはなくて。
自分がつくった“あの時のあの場所のあの人”っていう幻想やイメージの中にしか存在しない。だからこそ大切で、だからこそ後半のあの名も知らない、見たこともない場所にノスタルジーを感じるんだろうな。
後半はややピタゴラ的で、ハラハラして浸れない時もあるけれど。
冒頭の卓球ラリーのところどう撮るんだ…!?と思ったら、そう逃げるんかい!って画角だったけど。
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