くりふ

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへのくりふのレビュー・感想・評価

1.5
【ゆとりノスタルジア】

アマプラ見放題にて。

ビー・ガン監督は短編『A SHORT STORY』だけ見ています。可愛らしく楽しいあちらの、ものがたろうとする努力を、こちらでも見せて欲しかったですね。

体裁はゆとりノワール。で、探しものの話らしいが、何を見つけたのか、見つからなかったのか、よくわからない。

こんな主人公の場合まず、なぜ根無し草の如く生きるかの説得性に、私は、映画に乗れるかが左右されます。本作では、何となく楽だからそう流されている…としか思えない。余裕があるんですよね。煙草の吸い方一つとって(撮って)も。スカしているように見えてしまう。

別にクズが主人公でもよいのですが、その人物の“心の彷徨”とやらにつき合わされる場合、主人公以外に魅力がなければ、つき合い切れない。

前半はまだ良かった。タン・ウェイ演じるなんちゃってファム・ファタールの、可愛らしい地味セクシーが映えているし、すべて既視感あるが、映像の構築力は中々のものです。

タン・ウェイへのDVがさらっとスルーされると、良さは帳消しになりますが。彼女が乱暴される理由はないし「もう慣れたから」で済ませるのって、今どきナニ撮ってんのと思う。

本当に悲しい時に人は、林檎を丸ごと齧るのだそうだが、誰がそう決めたの?本当に悲しかったら物食う気にもなれないでしょ。涙を浮かべて林檎を食べ続ける画が出てくるが、役者のガマン大会みたいで大変だなあ…と同情しました。

頻発する、滴る雨と水たまりには、タルコフスキースキなんだねえ…と思わざるを得ないが、最近『ノスタルジア』を再見したところだったので、やっぱり比べてしまいます。

アチラも空疎な主人公が彷徨うが、彼を非難する美女というバランス感覚があり、主人公が空きを埋めるように、狂人ドメニコの魅力にのめり込む…という物語の背骨がある。難解と言われるが骨組みはシンプルで、“図と地”で地の凄まじい魅力が、さらに上書きしていた。

コチラは、策士、小策に溺れる…という後味でした。

後半、主人公が(架空の)寂れた町をワンカット長回しで彷徨いますが、前半でシンクロ率5%くらいだから、意味ない長回しをやられても0%に向かうばかり。3Dで見せるのが本来らしいが、何のため?架空と言っても実在する場所で、ただの町じゃん。

劇場で3Dで見たら違うかなあ?とも想像したが、私はIMAXも3Dも、見ているとスグ慣れてしまって、通常の映像見ているのと変わらなくなるので、本作もそうでしょう。

そのままで魅力的な情景を、わざわざ人工的に誇張するのって、映画として敗北では?

よほど夢幻的な画が出ればいいのだけど…。呆れたのは、ここからドローン空撮ですよ!と言わんばかりに、画面が無意味に揺れたこと。カメラのリレーに失敗したのか?

しょせん映画はハッタリだったりするし、こういう挑戦もドンドンやればいいと思うけど、結果確認のためだけにわざわざ、お金払って劇場行こうとは思わない。今後も要注意だ。

あ、でもこの映画って邦キチ案件で、映子さんがプレゼンすれば誰でも面白がれそうな気がする!残念ながら邦画じゃないので…ヤンヤンにでも頼むか!

<2023.12.8記>
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