寝木裕和

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへの寝木裕和のレビュー・感想・評価

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これは観た後すぐに書いておくべきかな、と思い、したためる。
だって、夢というものは、そういうものだから。すぐに忘れてしまうものだから。

ラスト約一時間のワンカットは、トリッキーな部分ばかりで取り上げられそうだけど、夢というもの表現するのにとてもうまく作用している。

たしかに、タルコフスキーへの明らかなオマージュだったり、ビー・ガン監督が影響を受けたものへのリスペクトも随所に見受けられるけれど、この作品から感じるマジック・リアリズム的な物語の紡ぎ方は、例えば南米のそれらでもなく、根本的にはタルコフスキー的な匂いでもなく、アジアでしかあり得ないものを感じた。夏目漱石「夢十夜」や、稲垣足穂の諸作などのような。

舞台は中国郊外の凱里にある集落、もちろんそこに行ったことはないのに、なぜか懐かしいような… 。子どもの頃、この祭りにいたような… そんなノスタルジーに駆られた。

どんな夢を見たのか、まったく覚えていないのに、起きたときに涙が頬を伝っていたことがあったことを、ふいに思い出した。
寝木裕和

寝木裕和