柏エシディシ

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへの柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
海外の映画好きやクリエイターから名前をチラホラ漏れ聴いてはいた監督ビー・ガン。凄いやつがいる、と。
ようやくお目見え。
また、凄い才能が現れてしまった。

ドリーミン・ノワール。
突飛なビジュアルだったり、キャッチーなクリーチャーが出てくる訳ではないけれど、現実と幻想の境界線を綱渡りするようなストーリーテリングは誰もが想起するであろうデビッド・リンチ。

主人公が母の面影と似ている旧友の恋人の行方を追う、というノワール的な筋立てはあるものの、過去と未来を行きつ戻りつする語り口で、物語が進んでいるのか、立ち止まっているのかも判別出来ず。
そう。まるで僕らが眠りの中で見る夢のように、捉えどころがない。
それでも、幻想的で、なのに荒涼としたリアリティも感じさせる世界観が、目覚めた時の「嗚呼、何か不思議に魅力的な夢を見た(様な気がする)」という忘れ難い感覚も呼び起こされる。

「後半60分全編3Dノーカット長回し」という手段も、あの夢を見ている感覚を、いや夢そのものを再現してやりたいという監督の妄執が滲み、ヤバい。
「夢」を映画に刻みつけようとする映画監督は今までもいたし、映画はそもそも、何度も観る事の出来る「夢」だとも言えるけれど、本気で「夢」そのものを再現しようとしている監督は稀有。

まだ正直、この映画を自分の中で消化出来ておらず、手放しで評価する事が出来ないでいるのだけれど、だからこそ、もっと知りたい。観てみたい。
今後の作品や公開の控えてる前作も、すごく楽しみ。
柏エシディシ

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