この映画がカンヌで公開され審査員賞を獲得してから50年経とうとしているが、そんなに経っても日本で公開の兆しがまるでないということはもう余程のことがない限り日本での上演は望み薄だろうけど、ちょっとそれが勿体なく感じられくらいの力作。
基本母と娘とかの会話で構成された演劇的な作風ながらも、ベルイマンやファスビンダーに匹敵する演出力と初期のゴダールやアラン・レネばりに大胆でキレのある(しかもそれでいて挑戦的要素も多分に含む)編集のおかげで終始見入ってしまい、尺の短さも相俟ってあっという間に終わったような心地だった。
画面に見入っていたせいで字幕を読めず会話の内容が一部しかわからなかったもののそれでも全く苦にならなかったし、やはり表現の優れた映画というのは物語を超越するものかとつくづく思い知る。
こんな驚異的作品でも日の目を見ることがないのも別段珍しいことではない日本の現状は残念極まりないが、万が一にでも生きている間に劇場で拝める日が来たら是非とも足を運びたい。