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キングスマン:ファースト・エージェントのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
やっと公開された!
「007」最新作と公開時期が近くなったせいで、キングスマンの始祖がのちにMになったみたいでおもろい。
サラエボ事件や第一次世界大戦くらいは復習してから見たほうが良かったかも。映画より遠い昔に学校で習った知識を引き出すのに必死。


過去二作がハリーとエグジーの擬似親子の物語だったのに対して、今作だとオーランドとコンラッドのオックスフォード親子。親からの巣立ちを描いた過去作と違って、親の愛の深さに焦点を絞った感じ。マシュー・ヴォーン監督らしいキレキレのアクションと、親子愛を中心としたドラマが熱い。

レイフ・ファインズを筆頭にイギリス名優勢揃いっぷりがすげえ。
特にレイフ・ファインズをお腹いっぱい楽しめた。大ベテランの名優があんなにカッコよくて、チャーミングに見えるなんて。
リス・エヴァンスが演じたラスプーチンとのイチャイチャは今作イチの見もの。
あのラスプーチンが面白すぎて、彼が消えてから物語がちょっとダレる感すらある。ラスボス戦あとの真のラスボスとして、もっかい出てこないか期待しちゃった。


「キングスマン」を観ると、普段スーツなんて堅苦しくて敬遠してるのに、うっかりコスプレ気分で着たくなる。英国紳士のスーツ姿に萌える人なら必見。過去イチで英国紳士のフォーマル七変化が堪能できて、スーツ見てるだけで眼福。「裏切りのサーカス」ばりにスーツ姿の英国紳士に萌えじゃくる傑作。
衣装を担当したのは「ザ・クラウン」や「ゲーム・オブ・スローンズ」といった大ヒットシリーズの衣裳デザイナーのミシェル・クランプトン。
衣装が主役の映画でもあるので、綿密な時代考証を経て各キャラクターを表す衣装になっている。インタビューによれば「オーランドの衣装はソフトな緑、グレーといった色を取り入れることで、深く悲しい過去や厳粛さを表現。コンラッドは若さやちゃんレジ精神を表現するために、オイルスキンのジャケット、スラックス、クリケットセーターなどをスタイリングに取り入れた」とのこと。
スーツやドレス以外にも、靴、ネクタイ、メガネ、カフス、タイピンetc…といった小物も全て今作のためにデザインされたもの。完璧なフィッティングで制作されているものの、時には準備期間中に俳優がスタントの練習しすぎて筋肉量が増えて体格が変わっちゃっうことも。何度も衣装合わせを重ねてより完璧なフィッティングになっているんだとか。労力はんぱない。


過去作イチ、暴力の取り扱いがビター。原則的に解決手段としては最悪の選択だし、大抵解決しないって姿勢がいい。戦争の取り扱いについても、戦勝国なのに戦争がいかに無益で、理不尽に人を踏み潰すか。国のために戦う兵士を必ずしも英雄として描かないあたりに作り手の誠実さを見た。戦争映画に一番大事なのは、迫力ある肉弾戦や飛び交う銃弾より「戦争ってマジで最悪だ」って思わせてくれることだと思うの。


難癖をつけるなら、ラスボスの二重生活に無理がありすぎる。マシュー・ヴォーン監督はハゲをラスボスにしがちなのはいいとして、テレポートかどこでもドアがないと移動できないっしょ。それにあの秘密基地は逃げ場がなくて、リスクしかないのでちょっと馬鹿っぽい。(狙ったバカバカしさだろうけども)
そもそもチャールズ・ダンスとマシュー・グードが出てくる時点で、なんとなく黒幕が絞られちゃうので3幕目の「正体見たり!」に意外性がなかった。

あとキングスマン設立後も世界大戦起きてるし、その後も全然阻止できてないやんけ! 新たな火種を抱えてるの分かってて、呑気に勝利に浮かれるよりは、ジョージ5世の労いに「勝っても息子は戻りません」とか「これだけの命を費やさないといけないことだったのでしょうか」くらい言ってやって欲しかった。王様に褒められたからってホクホク顔でどうする。自分のように若者を戦争で殺したくないがために、若者を鍛え上げて戦地に送る組織を作るって矛盾はないのか。


80・83本目
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