戦前からやっているオーソドックスなミュージカルスタイルがどこか古臭いし、お話がダラダラとしていて映画のテンポを遮っている印象に。そのうえ時間が三時間近くとたっぷりとあるのでのれないとひたすら苦痛になってくる。
あと話の取捨選択がおかしいのが気になる、実在のミュージカルスターのエピソードで悪いところを省くというのはいいとして子供との関係性を省いて恋愛絡みと金持ちになり散財するところばかりチョイスされているし、そこから後半虚構の世界で生きる主人公の苦悩に移るのに主人公が前半と同じくギャーギャー騒ぎっぱなしで精神の内面が浮かばないので共感する気が無くなってくる。しかも恋愛パートもニューシネマと同じ時期に製作されたとは思えないクラシックな関係性なのでますます嘘臭くなってくる、あるいは映画の世界が変貌して夢から化石になってしまったと言うべきか。
それでも工夫されたミュージカルシーンはそれなりに楽しいし、主役のジュリー・アンドリュースの身体を張ったダンスと美声による歌声が素晴らしいのでそれなりに楽しく鑑賞できた。あとジュリーによるキックが一瞬だけ披露されるのだが、よくある無理して頑張ったような蹴りではなくアクションスターのそれでちょっとビビった。
第二次世界大戦前夜というキーワードが後半出てきたのでラストへの伏線かと思いきや、放りっぱなしで終了するので唖然とする。
