ロバート・ワイズ監督、ジュリー・アンドリュース主演のミュージカル映画ということで『サウンド・オブ・ミュージック』の大ヒットを再現しようという意図は見えるのだが、『ウエストサイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』と違い、元となる舞台が存在しない本作は図らずもロバート・ワイズのミュージカル映画監督としての資質に大きな疑問符を投げつけている。
ミュージカル映画における歌や踊りはアクション映画におけるアクションシーンと同じで大きな見せ場ではあるが、それ自体はストーリーの進行に寄与しないので、工夫なく連発されるとストーリーの密度が低下し、ひいては映画全体の停滞を招く。とりわけ本作のミュージカルパートは劇中劇の形態をとるためほとんど物語の内容と連動しておらず、個々のシーンの出来は良かったとしても、オムニバス的な断片を見せられている感じが強い。結果として３時間弱に及ぶ上映時間を消費しながらも主人公のドラマは深まらず、内容空疎なパッチワークでできた退屈な映画になってしまっている。
