ロシア革命後のエストニアを舞台にしたグロテスクで美しい叙事詩的ゴシック幻想譚。
新しいエストニアの民族叙事詩的な色合いの作品。
モノクロームの映像で描き出された一つ一つのフッテージは、土着的で呪術的、時にグロテスクなのだが、本当に美しく印象的。
が、同時に印象的なシーンやエピソードの連続という叙事詩的な映画作りをしているので、シーンの繋がりや物語の展開に唐突感があるし、キャラクターを深く掘り下げたり複雑なプロットが在るわけではない。平たく言えば"おとぎ話"の集合体という感じ。
それとモノクロームは美しいが描写力はカラーに劣るので、俳優のアクションが大仰になるのは仕方ないところか。男爵演じるドイツ人俳優ディーター・ラーザーは言葉の壁があるのか、顔芸に終始しているし。
俳優のオーバーアクションだったり、各シーンに色々と詰め込みすぎでやり過ぎな感じもするけど、これは好みの問題。
普通の映画の様に小説を読むというよりも、詩集を楽しむ様に観る作品かも知れない。
基本的には悲劇的な物語なのだが・・・パンフレットを読むと、ヒロインを演じるレア・レストとボンクラ農夫役のヨルゲン・リークは演劇学校の同級生で、この映画の出演後に結婚した・・・というのは、ホッコリする良い話。