脳みそ映画記録

ノベンバーの脳みそ映画記録のレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
4.0
エストニアのおとぎ話的なラブストーリー。
奇怪な不気味さがあり、ホラー映画チックなのですが、観るとれっきとしたラブストーリーであることがわかります。

また、エストニアの美しい自然を背景に死者や人狼、悪魔、使い魔、魔女、疫病が徘徊する様はおとぎ話のようなファンタジーの世界を構成しています。

舞台はエストニアなのですが、本作はエストニアの歴史をちょっとでも知ってからみると、理解度が高くなります。
パンフレットには庄司博史氏の歴史に触れた上でのエッセイがあります。

エストニアはバルト三国の一国で、歴史的にみるとドイツやスウェーデン、ソ連らに支配されていた過去があります。中でもドイツ人による支配時代は「闇の時代」と呼ばれていて、多くのエストニア人がドイツ人領主の配下になっていました。
『ノベンバー』では『ムカデ人間』のハイター博士役で有名なドイツ人のディター・ラーザーが領主役で出てきます。彼の娘に身分違いの恋に落ちるのがエストニア人の主人公リーナが想いをよせる同じくエストニア人のハンス青年です。

まるで、少女漫画のお手本ような設定ですね。これをベースにファンタジー要素を加え、不思議な世界を作ったのが本作です。

元々エストニア人のものであるとして、領主から窃盗を繰り返す使用人のセリフはこのようなところに起因しているのでしょう。

エストニアでは元々キリスト教は普及しておらず周辺国からは「異教の国」としての認識がされていました。
ですので、支配占領の歴史によりキリスト教化が進みました。
『ノベンバー』でも教会のシーンがありますね。
エストニア人たちはキリストの聖餅を吐き出し、ドイツ人の領主の娘に非難されています。
また、キリスト像が血を流しはじめるのも何か意味がこめられているのでしょうね。 



歴史的なことはここまでとして、
多くの方の感想にもある通り、『ノベンバー』は冒頭の掴みが本当に素晴らしい!!

モノクロのエストニアの情景の中オオカミが現れるシーンから始まります。これが、美しいのですよ。そこから奇怪なデザインの使い魔クラットの牛泥棒が始まって、あ然としているうちに物語から目が離せなくなりました。
魔法や呪いがある中でも、本質的にはラブストーリーであることが主軸となっていてとても良かったです。

一番のお気に入りは雪だるまのクラットです!!☃☃☃