みんと

ノベンバーのみんとのレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
4.0
『マルケータ・ラザロヴァー』的映像美に息を飲む作品だった。

エストニアの作家アンドルス・キビラークのカルト的ベストセラーを原作に映画化。ライナル・サルネ監督の“全てのものには霊が宿る”というアニミズムの思想をもとに、異教の民話とヨーロッパのキリスト教神話を組み合わせ描いた独創的な作品。

今まで見た事のない独特の世界観。そしてダイナミズムより優雅さ。美しい音楽、或いは迫力の音響と使い分け、想いが届かない切なさへと導く。

冒頭“クラット”の存在を受け入れられるかが鍵となると思う。正直、一瞬怯むも余裕で上回る映像美に加速度的に引き込まれていった。

死者の日と言うと『リメンバー・ミー』を思い浮かべるけど、エストニアでのソレはまるで違う。陽気で明るいイメージとは真逆。

あらゆる物に魂が宿り、しかも それを映像化されると心落ち着かない。ただ、信じる事で救われる意味では、文字通りの救い。愛もまた救い。
極寒の地で、極限状態となると、生々しい人間心理を掘り下げた作品とも思える。

雪だるま型クラットの台詞が思いがけず詩的で沁みる。水を壮大に擬人化したかの表現はあまりに哲学的でもある。

そもそもが大きくメタファーなのか?諸々理解不能な状況もシステムも深掘りするだけ野暮なのかも…

ベール姿のリーナとハンスの雨のシーンは美しくて切なくて見入ってしまった。
そして、なんと言ってもモノクロ美で魅せる水中シーンの美しさったら!


少なからずエストニアの歴史や自然崇拝ぶりが興味深くもある美しくダークなラブ・ファンタジーだった。
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