不在

ノベンバーの不在のレビュー・感想・評価

ノベンバー(2017年製作の映画)
3.6
我々日本人は無宗教者だと言われているが、実際には神道という独自の宗教観を持っている。
これは万物に神が宿るという考え方で、全てのものに霊魂があるとされるアニミズムとも共通点が多い。
本作ではそういった霊魂が実体を伴っており、人の目で見ることも、直接触ることもできる存在として描かれる。
そしてこの世界には目に見えないものなどないのかと思いきや、どうやらキリストは例外らしい。
本来形を持たない形而上的現象が形而下の存在となっている世界において、人間はそのどちらを信じ、崇めるのかと言えば、やはり目に見えない方なのだろう。
こういったアイロニーは興味深いが、舞台装置、ミザンセーヌにばかり注力してしまい、人間という存在そのものが疎かになってしまっている。
人の愛や信仰、哲学についてもう少し描いてほしかった。
不在

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